「今挑戦しないことの方がリスク」山田さんの考える成長のかたち/合同会社ひとむすび 山田芳雅

   

聞き手:JK 写真:ゆーた 編集:あゆ

 

今回お話を伺ったのは、山田芳雅さん。

山田さんは広島大学在学中に一年半大学を休学し、アメリカで農業研修をされていました。帰国後は、学生どうしで「東広島ひとむすび」を立ち上げ、後に事業化しています。

現在もひとむすびのほか地域内循環をビジョンに様々な活動をされています。

 

私たちはそんな山田さんにお会いすべく、豊栄町へ。

山間の道を抜けると見えてきたのは、「豊栄ウール工房」と書いてある一軒の古民家。

 

東広島 ひとむすび 羊毛 地域おこし協力隊豊栄ウール工房。そっとのぞき込んでみる。

 

中に入るとこんな看板が。

工房で作った商品を買うこともできる。

 

山田さんはここで現在、地域の方たちと羊毛をつかって「豊栄羊毛プロジェクト」を進めているそうです。

 

工房では地域の方がワイワイしながら楽しそうに

作業していました。

 

人の変わるとき

 

― まず、山田さんの現在に至った経緯を聞いていこうと思います。山田さんは学生時代アメリカに留学されていましたが、どうして留学しようと思ったんですか?

 

僕はひとが変わるためには、環境が変化するかなにか大きな衝撃がないとダメだと思ってて、どんなに自己啓発本を読んだとしても変わらないと思う。例えば、親が亡くなるとかね。それくらい大きいこと。そう思うから、アメリカに行こうと思った。

 

 

― アメリカ留学後、日本に帰ってから現在までさまざまな活動をしてらっしゃいますが、そのきっかけになったアメリカでの体験があれば聞かせてください。

 

まずアメリカに行った理由としては、自分はどこかにいって修行するべきだと思っていたから。そこで何が起こるかなんて、当時はまだ全く予想していなかった。どうにかなるかなぁ、とかしんどいだろうけど成長はできるだろう、とか。本当にそれくらいの思いでしか行ってなかったね。

実際にアメリカに行って何を得たかっていうと、周りと隔離されて自分と坦々と向き合う時間を得られたっていうこと。今思えばそこが一番大きかったんだと思う。それともう一つあるとしたら、アメリカでみたファーマーズマーケットだったり、豊かな時間っていうのがすごくいいな、と思ったこと。

 

ー それが今ひとむすびでマーケットをやっているのにつながっているんですか?

 

そうだね。毎週日曜日とかは、いろんな人がいて芝生の上でみんな酒を飲みながらだらだらしゃべってた。それが、すごく大事な時間だと思って、これを日本風に変えて持ち帰りたいなって思った。今の活動にはそれがつながってるかな。

 

 

― アメリカから帰って、自分が変わったなと思うところはありますか?

 

実際、アメリカに行ったからこうだっていうのがまだわかんないんよね。向こうでの経験から何を得たのかはっきりはわからないね。

一年半かけて、ほんとに一年半分の知見が広がったかというと、決してそうではない。朝農場行って、種をポッドに埋めて、その何百本ものポッドを運んで、夕方までそんな感じ。夜には仕事が終わって、テレビを見る時はテレビ見ながら英語の勉強。そして寝る。毎日その繰り返し。ずっとそんな感じだから知見も広がらないわけよ。現実そんなもんで。

でもその間に、「自分の将来どうしよう」とか「こういうプロジェクトを日本でやったら面白いかなー」っていうことを考えていたその積み重ねがあるから、今もいろんなことに対してより深く考えられてるのかなと思ってる。僕はこれを「いい足踏みができた」って表現使ってる。結局、そうやって足踏みをしてたからこそ、今こうやってフットワークが軽かったり、本質を見る力と余裕ができたりしたのかなって思う。だから結局、アメリカでの経験が効いてきたと本当に分かるのは10年後だと思ってる。

 

 

経験の積み重ねとは

 

ここで学生時代から精力的に活動されている山田さんから、学生としてどうあるのがよいのか、私の疑問を投げかけてみました。

 

― 学生であるうちに、生き急いでいろんなことをどんどんやるのと、今のうちにゆとりをもって好きなことをゆっくりやるのと、バランスが難しいなぁと最近思うのですが、山田さんはそのことについてどう思いますか?

 

 

僕の考えでは、生き急げる分は生き急いでいいと思ってる。結局どんだけ失敗するか、どれだけ経験値を積むか、だと思ってて。特に学生の間はね。どのタイミングでどんな花を咲かせようとしてるのかは分からないけど、僕は30,40歳になるまでにいかに経験値を重ねていくかが重要だと思ってる。

俺は、やりたいことを見つけて自分がどう生きていくのかを見つけるのが人生だと思ってる。だから、自分の体力が持つ分は、できることは全力でやるべき。ひとの2倍、3倍いろんなことやればそれが自分の経験になってるから、きっと40くらいになった時の成長具合では他のひとに負けてないかなって思う。

 

今頑張れる分は頑張っていいと思う。ただそれは体を動かす頑張りもいるけど、頭もしっかり使ってどこの環境に自分が身を置くかだったり、どの場で自分はどういう仕事をするかだったり、どういう能力を身につけるかだったりは考えて環境を選んでいったほうがいいと思う。

 

― 僕は経験のために、いろんなひとにあっていろんな話を聞いたりすることが好きなんですが、それについてはどう思いますか?

 

僕の考えだけど、ひとの話を聞いて伸びるのは外枠だけなんよ。結局、自分が知ってる知見より自分って伸びんのよね。話を聞けば、こういうひといるなとか、こういう生き方あるんだとかいう風に外枠の部分は伸びるんよ。

 

「ここが外側で、ここが内側で……。」

おもむろに紙を取り出し、図を描きながら丁寧に説明してくれる山田さん。

 

これって、自分自身は成長しているように感じるけど、実際まったく伸びてない。やっぱ伸びてるように感じるんよ。めっちゃこういうの知ってるで、とか。でもそういうひとって見たらすぐにわかる。口だけで中身が伴ってない人が多いような気がするんよね。

ひとの話を聞くことでたしかにこの外枠の知見とかは広がっていくけど、内側の自分自身の能力とかポテンシャルっていうのは、努力して自分で経験値を積み重ねていかないと、ほとんどのひとの場合伸びない。だから、いかに行動にまで落とし込んでどれだけ中身が伴っていくかが大事だと、僕は思ってる。

外枠だけではなくて内側がどれだけ伸びるかということも大事だ思っておくと、将来役に立つかもしれないね。

 

新しいことにどんどんチャレンジしていく山田さん。

ここで殻に閉じこもっているのではなく、新たな挑戦を繰り返して今しかできない経験をしたいと思いました。

 

ライターだより

学生時代から、自分を成長させるために今現在も走り続けている山田さん。取材の途中、私の他のたくさんの疑問にもひとつひとつ親身になって答えてくれました。そんな山田さんの力強い言葉に背中を押されたような気がしました。本当にありがとうございました。

 

カメラマンだより

山田さんとはこの日初めてお会いして、このインタビューをきっかけに現在一緒に活動させていただいております。様々な場でお話をさせていただくなかで、ひとがなにを悩んでいるのかを見抜く力、それを解決に導く力がすごいかただと尊敬しています。これからもたくさん学ばせていただきたいです。

 

【かいた人】JK / 人事・ライター

こんな名前ですが男です。怪しくはないです。愛媛出身の折り紙野郎。

 

【とったひと】ゆーた(Yut@)/カメラマン

知らないところを探検するのが好き。もちろんカメラをつれて。
家ではクラシックギターを弾いたり、本を読んだり、寝たり。
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