聞き手:しゅるしゅる 写真:りょーま 編集:みやさこ
広島大学から自転車を漕いで約20分ほどのところに、こぢんまりとした洋風の建物があります。
それが、今回取材をした「ラパン」というパン屋さん。
フランスパンを持ったうさぎの看板が目印です。
緑色のドアを開けると、美味しそうなパンがいっぱい並んでいる様子が見えてきます。
かじるとふわっとバターの香りのする さくさくのクロワッサン、
じっくり煮込んだ牛すじの入ったカレーパンなど、種類も豊富です。
今回は、ラパンの店主 ルメ・パトリックさんと、奥さんのルメ・花愛さんにお話を伺いました。
パトリックさんは、26年前にフランスから日本に来たパン職人さん。
花愛さんとの結婚をきっかけに、ここ西条にいらしたそうです。
ラパンには、多くのお客さんが訪れます。でも、そのお目当てはパンを買うことだけではありません。
例えば、
パトリックさんや花愛さんと会話をしたくてラパンを訪れるひと。
手作りのお野菜を届けに来てくださるひと。
就職して西条を離れたあとも、ラパンに遊びに来てくれるひとや、
誰がどのパンを焼いたのか、見た目でなんとなくわかってしまう常連さんもいます。
それぞれの思いを持って、
いろんなお客さんがこのお店を訪れています。
「サンドイッチに挟む野菜の8~9割は頂きもの。」
そう話してくださる花愛さんの横には、
たった今も、お客さんからもらったというお餅が。
ラパンのスタッフの皆さんとお客さんとの間には、
商品の売り手と買い手の関係を超えた、あたたかな繋がりがあります。
たくさんのお野菜や差し入れなどを頂けて、本当に感謝しています と笑顔のお二人
こんな風に地域の皆さんから愛され続けていることには、
パトリックさんのパン作りへかける思いの強さが
関係しているのではないかと思います。
パン作りで心がけること
「そもそも自分の中のパン作りの基本って、
『美味しく食べていただくこと』と『飽きないこと』なんです。」
お客さんに、いつも『美味しい』と思って食べてもらえることを 一番に考える。
だから、
新しいパンを作ってみたり、材料をより良いものに進化させていくのだそうです。
「わしがより良い方向に変わっていくことで、
他のスタッフのみんなも成長していくんですよね。」
そうおっしゃるパトリックさんと花愛さんには、
いつも意識していることがあります。
ホンネを言える環境をつくる
パトリックさんと花愛さんは、
スタッフの一人ひとりに、「一緒にラパンを作っているんだ」という気持ちを持ってほしい と考えています。
そのために、自分の意見を言いやすい環境を作っているのだそう。
「わしが『これどう思う?』って意見を聞いたとしても
気を遣われて、正直に言ってもらえなかったら良くないと思う。
遠慮なく言いたいことを伝えてほしいって思うんよ。」
では実際に、自由に考えを伝えやすい環境をつくるため
お二人は何をしているのでしょうか。
「『自由に楽しんでいいとき』と、『厳しい対応をされるとき』の二つをわかりやすくしているの。」
「例えば、お店の内装を決めるとき、新作のパンを考えるとき、
どんな意見でも、それがラパンらしさを考えたものなら絶対に怒らないよ。
普段も、やることをやれば楽しく自由に働いたらいいいから、
出勤時間は決まってても退社時間は決まってない。
でも、美味しいパンを食べてもらうために努力していなかったら怒られる。
スタッフもそれをわかってるから、ホンネで話すことが怖くない。」
「あとは、基本だけど、
『もし自分がスタッフの立場だったら』っていつも考えとるよ。」
私も、友だちや後輩に何か意見を伝えるとき、
相手が前向きなって問題に取り組めるようにするにはどうすればいいか
考えながら話をしています。
これも、パトリックさんの心がけている『相手の立場に立って考えること』に
通ずるかもしれません。
失敗したっていい。「そこから何を学ぶか」だから。
実は、スタッフの中には
パトリックさんが専門学校で先生をしていたときの
生徒さんもいらっしゃるそうです。
生徒から見たら先生って、「なんでもできる」存在に見えがち。
しかし、パトリックさんは そんな思い込みだって破っていきます。
「マカロンの試作品作るときにさ、マカロン何回焼いた?(笑)」
「いや、もう何回とか数えられるもんじゃなくて。
1年間かかって、やっと自分のマカロンができた。」
「こんな風にね、
もともと生徒だった子たちの前でだって、バンバン失敗するんです。
私は、そこが一番主人のいいところだと思う。
『失敗してもいい』ってことを、体で示してるから。」
一歩目を踏み出さなかったら二歩目だって踏み出せないのに、ビビってたってしょうがないでしょう?
「自分の苦手なところ、やったことのないことに挑戦しないと、全然上達なんてしない。
私にしてみれば、1回目はどうしたってきっと失敗なの。
でも、どこで失敗したのかをちゃんと考えて、
細かく微調整をしていきながら、ベストなものを作ればいいって思ってる。」
「それに、失敗することで理由を考えるようになるし、理屈まで勉強しようって
思えるようになるでしょう。
だから私は、スタッフのみんなに、
失敗に学びながら新しいことに挑み続けてほしいって思う。」
ラパンらしいパンを作るために、
失敗から学んで向上していく。
オーナーを筆頭に、スタッフ全員でラパンを作り上げていく姿へ
一つの大家族のイメージが重なった瞬間でした。
ライターだより
ラパンのパンが、パンそのものやスタッフの皆さん、地域の方のことを
こんなにも大切に考えながら作られていることがわかって、驚きがとても大きかったです。
私も周りのみんなとの繋がりにもっと感謝して、大事にしたい。
そう実感しました。
次は、友だちも一緒にパンを買いに来よう。
カメラマンだより
頑張っているひとほど、トライアンドエラーを繰り返しているんですね。
おすすめの商品は何ですかって聞かれても困るよ、全部に決まってるじゃないか
と笑顔で、でも誇らしげに話される姿が印象的でした。
これからパンを食べるときに、選ぶときに、お二人の顔が思い出されるのは間違いありません。
ありがとうございました。
Boulangerie LAPAIN 御薗宇店
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HP:http://boulangerie-lapain.com/
【かいたひと】しゅるしゅる
カメラマンたまにライター
カメラと写真が大好きで、最近はポートレートを撮りたくてうずうずしている。
好きな食べ物は噛みごたえのあるもの。特にイカが良い。
【とったひと】りょーま/ライター&カメラマン
大分出身。主に人と話すか家でAmazonプライムビデオ、YouTube、TVerを見ている。暇さえあればプライム会員に加入させられるため注意。
2020年4月6日
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