mahoLabo. × HASHIWATASHIプロジェクト
酒まつりが終わってから約1か月が経ちました。今年も大盛況でしたね!
みなさん、各々の楽しみ方をされたと思います。
さて、大変お待たせいたしました。
Yeastは前回に引き続き、HASHIWATASHIプロジェクトについての記事をお届けします。
(HASHIWATASHIプロジェクトについてはこちらをご覧ください
→http://maholabo.com/hashiwatashi1/)
予告の通り、今回の記事はなんとEXILE 橘ケンチさんのYeast独占インタビュー!
7月某日。
2日間で西条8蔵+安芸津2蔵とまちのお店を巡り、東広島の人々の生の声を聞いて回ったケンチさん。
ケンチさんの目に、東広島のまちはどう映ったのでしょう。
東広島との出会い
― ケンチさんは以前にも東広島には来られたことがあるとおっしゃっていましたが、どういう機会でいらっしゃったんですか?
初めて西条を訪れたのは、WSET(wine and sprit educational trust)という日本酒の講座を受けていたときです。WESTはもともと世界中で展開されているワインの講座なんですが、日本酒の部門が加わって現在では日本でも受講できるんです。
2018年の初頭にWSETのエデュケーターを養成するためのツアーが行われていて、何日かあった日程の内、西条のまちで日本酒の勉強をするプログラムに、ご縁があって参加させてもらったのがきっかけですね。
日本酒をライフワークにしているケンチさん。
雑誌『Discover Japan(ディスカバー・ジャパン)』で連載を持っている。
要するに、世界中の酒loverが西条に集まる場所に行かせてもらったんです。その時が最初の西条との出会いでした。
最初は駅の近くにあんなに酒蔵があることにびっくりしました。
― そして今回、HASHIWATASHIプロジェクトで再びいらっしゃったわけですね。
このHASHIWATASHIプロジェクトには私たち学生も関わらせていただいたし、商工会議所青年部や東広島青年会議所、酒蔵協会の方々など、西条のまちの核になるような人たちを巻き込んでの企画でした。
酒蔵だけでなくまち全体を盛り上げる企画になった経緯について、もう一度教えてください。
そうですね。最初に賀茂泉酒造の前垣さんとお話ししたときは、賀茂泉酒造さんを応援するという形だったんです。
でも、前垣さんから「うちの蔵だけじゃなくて、他の酒蔵や西条のまち全体を盛り上げてほしい」という要望をいただいたので、そういうことであればまちごと応援できる何かを考えられたらいいなと思ったのがきっかけです。
それで思いついたのがまず小さな本を作るということ。
そして、外部の人間である僕の目線で切り取って作るのではなく、まちの人と一緒に作り上げたいという気持ちを持ちました。
酒まつり当日も配布されたフリーペーパー。
文章執筆と写真撮影を、mahoLabo.のライターとカメラマンが行った。
そこから商工会議所青年部や東広島青年会議所、酒造協会の方々にも協力していただきましたし、このまちにいる若い方たち、今回で言えば広島大学の大学生と議論しながらまちの魅力を掘り起こしたかった。
そうしたら、いい形でmahoLabo.のみなさんに出会えた。
みなさんとは初めての取組でしたが、だからこそ新しくて面白いものにできるのではと思ったんですよね。
「僕はこう思うんだけど、どう思う?」というディスカッションを経て、いろんな人の考え方を共有して、新しい価値観を作り上げていく。そういうことが僕はすごく好きなので、それを西条の方たちと深くコミュニケーションをとっていくことで、僕がこのまちに関わる意味ができると感じていました。
蔵や世代を超えてつながるまち
賀茂鶴酒造にて。
― 取材を行った2日間では、西条や安芸津エリアにある酒蔵を巡り、蔵の中まで見せて頂いたりしました。
この取材を経て、ケンチさんは西条の日本酒の魅力は何だと思いましたか?
もちろん、各蔵それぞれに想いは異なると思うんですけど、その中で一番印象的だったのは、一つの蔵で勝負していないという言葉。
要するに西条のまちで8蔵、安芸津も合わせて10蔵ある、その全ての蔵で東広島の酒として勝負しているとおっしゃっていたんです。
言い方があっているかわからないですけど、チーム戦みたいなイメージだと思うんです。
西条の蔵が一体となる大イベント・酒まつり草創期の話を語る、亀齢酒造蔵元・石井英太郎さん
EXILEを始めLDHのグループもそうなんですけど、EXILEっていうものがあって、メンバーがいる。それぞれ特徴があって個性があるからこそ、みんな個人の仕事もしているし結果的にそれがグループにも還っていくいう。
僕らとはまた違うのかもしれないですけど、西条のまちは個人もありながら、まち全体の協調性みたいなものが意識されているのを感じました。
それを聞いた時、多分他の酒蔵さんは羨ましがるだろうなぁと思いました。
一つの蔵で孤軍奮闘しているお蔵さんは多い気がするし、日本酒やアルコール飲料を取り巻く環境は徐々に厳しくなってきていると言われていて、自分の蔵だけで、もがいているところもきっとたくさんあると思うんです。
ですが、おそらく西条には周りに相談できる仲間や先輩がいて、相談し合いながら活路を見出していける。
その過程を作れるっていうのは西条ならではの魅力だと思います。
「酒造りを教えてくれる先輩がたくさんいた」と語る金光酒造の杜氏・金光秀起さん
熱量、つながり。人の力が強いまち
― 酒蔵に取材に向かう日の朝、ケンチさんは「西条を表す新しいキャッチフレーズを見つけたいな」とおっしゃっていました。
取材を終えて見つけた言葉はどんなものでしたか?
enishiの大谷さんを始め多くの方が口にされていた、「伝統と成長」という言葉も面白いと思いました。
「チームと個性と」というようなワードもそうですね。
僕はまだそこまで西条に来た回数は多くないですけど、どれもすごく濃厚な時間だったので、自分の中で西条のまちの人の顔や情報がどんどん入ってきて、掘れば掘るほど面白いまちだなと思いました。
日本全国どこに行ってもきっとそのまちなりの魅力があると思うんですけど、全部行くのは不可能に近い。自分の人生で関わることができた西条は、知れば知るほど魅力が湧き出てきた気がします。
この小冊子はいかにその新しい魅力を伝えていくかに想いを巡らせました。
そういえば、富久長の今田さんが、広島の気質的にみんなどんどん外に学びに出ていくとおっしゃっていました。パワフルで活力の溢れる若い世代のみなさんを見て、そういう気質があるんだろうなと感じました。
今回の小冊子で表現したものの中には、そういう方々から感じた「躍動する西条」というイメージもあったかもしれないですね。
― 確かに、このまちの方々が持つエネルギーってすごいですよね。
今までの西条を支えていた世代の方々、これからの西条を作っていく方々のパワーが合わさってこそ、今のこのエネルギッシュな感じがあるんだと思います。
確かに今回意識したことには、「世代を超えて躍動するまち西条」といったものもあったように思います。
山陽鶴酒造・本永さんと。
なかなか一般の会社とかではそうはいかないのかもしれないけれど、まちぐるみだとまちをよくすることがみんなの目的になると思うので、「このまちで自分が楽しく生きるためには?」と考えたら、会社とかそういう組織とはまた違った繋がり方になるんだと思います。
それは年配の方と若い人が気軽に会話するようなことだったり、協力しあえることは協力したり。
だから、今回訪れた柄酒造さんを始め、豪雨災害で被害を受けた後にたくさんの方々が支援してくれて、「本当にやめようかと思ったけど、その人たちのためにやろうと思えた」とおっしゃっていた。本当にリアルな言葉だなと思いました。
なぜなら、蔵にある機材全部捨てることになって、あんなに水に浸かってしまったら、「あぁもう終わりだな」と思いますよね。
でも、訪れてみるととても綺麗だった。この状態までにするのは相当大変だっただろうなというのは想像ができた上に、それを可能にしたのも人との繋がりの力。
豪雨被害を受けた柄酒造さん。
周りの人々の協力で、酒造りが続けられることに。
やっぱりまちというのは人との繋がりだったり、人の持つ想いで形作られている。
西条というまちもそこに生きている方々の個性で彩られていると感じました。「個性で彩られるまち西条」なんだと。
― 確かにそうですね。
きっとケンチさんの頭の中では西条はすごくカラフルというか、いろんな色があるんでしょうね。
色もそうだし、熱量の方が近いかもしれないです。いろんな人の熱量で息づいているという。
ケンチさんが掘り出す、西条の新たな魅力を伝えるものに。
― 今回この冊子を作るにあたって、様々な情報、人の思い、熱量などを感じられたと思うんですが、実際に形にする際にはどういう部分を意識されましたか?
今回の冊子には日本酒の蔵を応援するというテーマがありますけど、日本酒業界の人や日本酒のファンだけが手に取るものであればいいとは思っていませんでした。
だから、世界でもトップレベルの豆を置いているコーヒー豆屋さんといった、酒蔵だけじゃないまちの魅力も載せたんです。
おしゃれなEARTH BERRY COFFEEの店内。
西条のおいしい水で飲むコーヒーも格別だ。
それが他のエリアの感度の高い人に届いて西条のまちって面白そうだなと思って、新幹線代を払ってでも来たくなるような、そういうまちの魅力を伝えられる冊子にしたいなと思っていました。
そのためには、表現の仕方とか伝え方が大事。
今回の小冊子だけで今すぐこのまちを変えられるわけではなく、変えられるのは伝え方だけですから。
その伝え方を橘ケンチが関わるとこうなります、というものを少しでも感じていただけたら嬉しいです。
それが街の方にも喜んでいただけるものになっていればなお嬉しいですね。
そんな新しい西条のまちの魅力が浮き出てくるようなツールになればいいな、そう今も思っています。
― 最後の質問になりますが、改めていろんな目線を持ってまちを巡ってみて、東広島のまちはどうでしたか?
何よりも掘りがいのあるまちだなと思いました。
地形的にも山と海が近いから、いろんな難しい場所にも家を建てざるを得ない場所も多いと富久長の今田さんもおっしゃっていましたけど、そういう場所って独自の文化が育つし、難しい場所だからこそ、人は知恵を使って生き延びていくんだと思います。
災害があったことは悲しいことですけれども、それを経てまたいろんな人が集まって、いろんな新しいことを生み出していく。
それって素敵なことと言ったら不謹慎かもしれませんが、人が寄り集まってみんなで物事を解決していく、頑張ってハッスルしていく。その姿勢が僕は好きなんです。
災害は絶対に起きて欲しくはないですけれど、大変なことが起こった時にみんなで助け合えるまち。また新たな場所に自分たちの力で向かっていける人たちが息づくまちなんだなと思いました。
人の力が本当に強いまちに今回関わることができてとても嬉しかったです。
【かいたひと】のんの / mahoLabo.代表・ライター・編集
京都出身。おいしいパンがあれば幸せ。趣味はりんごをワインで煮ること
【とったひと】かんちゃん
カメラマン兼WEBデザイナー。大阪出身。
写真を撮ること、人と話すことがとにかく好き。
人が気が付かない魅力や楽しさを探すことが得意。