「いろんな人の目線に立ちたい」学生と働くホテルマン/西条HAKUWAホテル 久保和也

  

聞き手:きっふー 写真:かんちゃん 編集:のんの

広島大学の目の前にある大きな建物、「西条HAKUWAホテル」。
一度は見たことがあるけど……ホテルだし入りにくいなぁ、と思っている人も多いと思います。
そんな方に、中で働いている人のことを知ってもらえると嬉しいです。

 

今回取材させてもらったのは、久保和也さん。
実は私もこのホテルでアルバイトをしているんですが、そこで接する久保さんの印象は「大人なのに学生に近い存在」。
今回はその謎にも迫りたいと思っています。

いつになく真剣な表情の久保さん。ちょっと緊張していたらしい。

 

予約室という仕事

 

—今いらっしゃる予約室では何をされているんですか?

 

1番わかりやすい仕事は宴会を予約されるお客さんと打ち合わせすることかね。

12月の忘年会とか3月、4月の歓送迎会の時期が打ち合わせする時間が多いねえ。

広大(広島大学)の歓送迎会に向けて、実は今日も結構打ち合わせをしてたんよ。

 

—パーティーの企画みたいで楽しそう!

予約室はすごく楽しいんよ。

 

 

こないだも「子供の初節句のお祝いをやりたいです」という仲の良い家族と打ち合わせだったんだけど、「じゃあこのぐらいの予算でこれやったらどうですか」「お子さんがこれぐらいの年齢だったらお子様ランチがいいと思いますよ」ていう提案をしてみたんよ。そしたらお客さんも「いいね、ありがとうございます」ってなって。お互いの気持ちが重なる感じがして嬉しくなった。

 

久保さんはきっと、楽しいことを提案するのが好きなんだ。
 

—お客さんとのコミュニケーションを大事にされてるんですね。

 

そうだね。基本的に対人関係は楽しくしたいって思ってるし、そうなるように工夫してるよ。

でもやっぱり、いいことばっかりじゃなくて。

 

—それってどういうことですか?

 

基本的には、お客さんとの一対一の打ち合わせはメモを取りながらやりよるんよ。

けど、自分はこう思ってお客さんに伝えたけど意図がうまく伝わってないとか、そういった行き違いで当日に「これじゃない」って言われることがあるね。

でもお客さんだし……どうしようかな、みたいな感じ。

 

コミュニケーション、難しいですよね……。

 

ーそういうときってどうされるんですか?

 

ご迷惑かけるのってもちろんお客さんもだけど、宴会の人とか料理の厨房の人とかにもなんよ。だから、ごめんなさいって言って素直に謝ってまわるよ。

 

ーきついなあ。私だったら素直に謝れる自信ないなあ。

 

だから、そうならないように金額は見積書をちゃんと作る。配席に関することだったらレイアウトをちゃんと作る。っていう風に、ものにしてちゃんと見せるって言うのはお客さんに時間をもらってでもしっかりするようにしてるかな。

 

 

 

大学生と久保さん

 

—私をはじめ、バイトで学生と関わる機会も多いと思います。その人たちを見ててどう思いますか?

 

「シフトに入りなさいよ」とは口では言ってるけど、大学生だしもっと遊べばいいのにな、とも思ってるね(笑)

 

 

ーそんなこと思ってたんですか(笑)。でもやっぱり、本音の部分と、ホテルの従業員として私たちに伝える部分って違いますよね。

そのあたりのことって、どういう風に考えているんですか?

 

難しいところだよね。人件費とか売上とかは会社のトップは気にすると思うんだけど、極端に言えば人を絞るとかそういうことになるんだよ。

でもバイトの子たちはそういうことは考えていないだろうから、そこは楽しく仕事してもらいたいし。

だから、ここはこういう風にやってよっていう風に、上手くコミュニケーションをとって伝えるようにしている。

 

私たちアルバイトが楽しく仕事をできているのは、久保さんの裏での気配りのおかげなのかもしれない。

 

—バイトに入ってくる学生の中には、受験のとき泊まった方もいるのかなあ。

 

「受験のときここに泊まって印象が良かったんで、アルバイトしに来ました」っていう子もいるよ。そういう風に新生活で東広島に初めて来て、伯和ホテルは良かったって思ってもらっているっていうのはすごい嬉しい。

そうやってアルバイトを始める子もいれば、卒業するっていう子もいて、変遷を見ていくのも楽しい。

 

—アルバイトの子が卒業していくのを見送るのはどういう気持ちなんですか?先生とか親みたいな?

 

そんな感じかも。1年生から知ってて、いちばん近くで見てきてるからねえ。

寂しい気持ちにはなるよね。

 

—卒業された方でまた来られる方っていらっしゃるんですか?

「お客さんが『久保さんいますか』って言ってるよ」って呼ばれたことがあって、クレームかなって思ったら「ああ久保さん〜」って元バイトの子が来てくれたりしてね。その時は嬉しかったなあ。

 

私が卒業する時は泣いてくれるのかなあ。

 

いろんな人の目線に立つ

 

—久保さんは、これからどんな仕事をしたいですか?

 

いろんな人の目線に立ってホテルを見てみたい。アルバイトにはアルバイトの目線があるし、新入社員には新入社員の目線がある。俺には俺の目線があるし、主任クラスの人の目線とか取締役の目線がある。

ちょっと見てみたいな全部。

 

 

 

ー色んな人の目線に立つって、その立場のことをよく分かろうとしているってことですよね。

 

そうだねえ。普段自分がああしたいとかこうしたいとか不満に思ってたことも、他の人の目線によっては理解できるのかもって思うんよ。そういった意味ではまだまだ勉強したいなって。

 

ーなるほど。いろんな人とコミュニケーションを取るときに大事なことだ。

 

俺は立派な人間ではないけど、でもやっぱりいろんなことをしてたらなるほどって思うことがいっぱいある。自分一人で悩んでたら、上司とかバイトの子から教えてもらうこともあったりね。お客さんに地域情報を教えてもらって学ぶこともある。

毎日なんだかんだ楽しい。

 

 

 

(番外編)

ーそういえば、久保さんって学生の時、どういう大人になりたかったんですか?

 

本当は渋めのかっこいいダウンジャケットを着て、綺麗な鞄を持ってるおじさん(笑)。
今くらいの年齢になったら、もっともっと大人になってるはずだったんだけどなぁ。

 

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学生と大人の境界線は考えだすと難しい問題。でも久保さんみたいに、あっけらかんと「ほんとはこんな大人になりたかった」って言えるのもそれはそれでいい大人なんじゃないかな。

 

ライターだより

これまでは久保さんが「大人なのに学生に近い存在」な理由がずっと分かりませんでしたが、今回の取材で、私たち学生のことを分かろうと努力されているからなんだと気づくことができました。
これからもそんな久保さんでいてもらいたいし、そんな久保さんについていきたいと思います!

 

カメラマンだより

題名にもある通り、色んな人の目線に立って物事を考える久保さん。大学生はもっほそろそろでないと遊べばいいという言葉にやさしさを感じました。大学生の想いもくみ取ってくれ、緩いところは緩く、でも真面目なところはとことん真面目で。本当にお兄ちゃんのような大人でした。

 

西条HAKUWAホテル

〒739-0047 広島県東広島市西条下見6-5-45(広島大学正門前) 
TEL:082-431-1111(代表)

 

【かいたひと】きっふー
山口出身。チョコを与えると喜ぶ。

 

 

【とったひと】かんちゃん
カメラマン兼WEBデザイナー。大阪出身。
写真を撮ること、人と話すことがとにかく好き。
人が気が付かない魅力や楽しさを探すことが得意。