<sp
聞き手:あみぱん 写真:かんちゃん 編集:あゆ
車を降りると、ミンミンミンとせわしない蝉たち。
空には食べたくなるような入道雲。
すこし、じっとりした気温すらわくわくします。
ことしも東広島にも夏がきました。
今回は福富にあるクレープ屋さんPoo’sのおはなしです。
私がPoo’sの店長さんである小南さんとお会いするのは取材で3回目。
1回目は部活の新入生歓迎行事、2回目は家族で食べにきました。
たった数十分の出会いと会話で、また会いたくなってしまうひと。
いったい小南さんってどんなひとなんでしょう。
もともと小南さんは京都の方で、建築業や営業、いろんな仕事をやってきたそうです。
― なぜこの場所で、このお店をひらいたんですか?
結婚することになったときに、奥さんのおじいちゃん、おばあちゃんが田舎暮らしをしたいということで、
僕と奥さんも自分たちでお店をやりたいというのがあったので、土地を探して、たまたまここに行きついたんですよ。
クレープ屋さんをしようと思ったのは、僕はもともと接客業をしてて、奥さんがクレープ屋さんで働いていたからです。始めるときの不安は全くなくて。
気軽に初めたら19年経っていました。 びっくりです(笑)
お店を長いことやってるんで、オープンしたときに来てくれた子は、もう結婚してたりとか、お子さんをつれてきてくれたりとか。
色々なお客さんにかかわりができたりとか、すごく楽しくやってますね。
お客さんに時間を忘れてくつろいでほしくて。だから、時計は小さいのをひとつだけ。
人生は修行
19年もやっていると、色々な年代のひとがくるんですよ。
僕、お客さんと話すのがすきなんです。
勉強はあまりできないんだけど、
知識として色々な話を聞くのがすきなので、色々な方の人生や、お話を聞かせてもらって、僕の方が楽しませてもらってます。
例えば主婦層の方には料理の作り方を聞いたり、お年寄りの方には、野菜の作り方を聞いたり。
それを聞いて、実際に家でご飯をつくったりするんですよ。
あ、若い子とかはゲームの話をしたりとか(笑)
― 小南さんが、お客さんとお話をするなかで大切に思ってることはなんですか?
お客さんと話すことを仕事だけと思ってたらできないけど、僕のモットーとしては人生は修行で、無駄な知識はないと思っているので。
いろいろなひとの話を聞いて、それがまた他のお客さんと話すことにつながっていたりして、
無駄なことかなと思っても役に立ったりして
全部がつながってる感じがしますね。
小南さんって「あなたの話を聞きたいんです!」「もっと知りたい、面白いです!」という気持ちを、温かいまなざしや、大きな笑い声で、全身から向けてくれている方です。
どんな話もこぼさずに聞いてくれる、自分の話もちゃんとしてくれる。
だから、また会いにきたくなるのかもしれません。
そんな小南さんが大切にしていることを聞きました。
世界をまるくする法則
僕も実践しようと頑張ってるんだけど、
自分のことを優先することもあったりと、難しくて。
でも、ちょっとだけでもいいから、立ち止まって周りをみるとか
周りの人の気持ちを考えるってことを実践してほしいなって思います。
1人で生きてるって顔してるひとすごく多いと思うけど
自分が着ている服は誰が作っているのか 何を食べて自分は生きているんだって。
絶対誰かが、ものをつくったり、ご飯をつくったりして、生活する上では、ひとが何かしら関わって生きてるんだよってとに気づいてほしい。
そうしたら、ちょっとだけでもほんとにほんとにちょっとだけでいいんで、ひとのことを考えるってことをしてもらえたらいいなっておもいます。
― なるほど。それを実践するのって簡単ではないです。他のひとのことを考えるって思える時はどんなときですか?
あの、意外なところに自分だけじゃできないことっていっぱいあって、それに気づいたときに、少しだけでもひとにやさしくできると思うんです。
それが自分に返ってくることも、たくさんあるので。
ささいなことがつながって、ちょっとずつ広がって、世の中がまるくなると思います。
人のことを考えるって、できそうでむずかしい。
自分に余裕がないときって尚更。でも、ひととしてとても大切な部分。
そんなときは深く息を吸って、この言葉を思い出そう。
小南さんが切って組み立て、奥さんが絵を描いた本棚。
作ることができるものはなるべく作るようにしているそう。
ほそくながく
― 小南さん、これからの目標ってありますか?
これからの目標としては、死ぬまでここでクレープが焼けたらいいなって。
いま、お客さんが連れてきている子どもさんが大きくなって、孫みたいな子を連れて来てくれて。
どんどんつながっていけて、お客さんとこうして楽しくお話をして。
お金がたくさんあれば色々なことができるけど、そうじゃなくてもしあわせになる方法も知っているから、
お店を大きくするとか、増やすとかではなくて、
僕の手の届く範囲でつながりができて、
ほそくながくお店が続けていけたらなっていうのがいちばんですね。
取材のあと、クレープを焼いていただきました。
にこにことお話をしていた表情とは、全然違う真剣なまなざし。
軽やかに生地をやき、あっという間につくってしまう姿。かっこよかったです!
すっきりした甘さでおいしかったクレープ。ごちそうさまでした。
―――――――――――――――――――――――
取材後、お店に郵便局の方が宅配便を届けに来ました。小南さんが荷物を受け取る たった数十秒。
ことばを交わし、笑顔を交わす。郵便屋さんも小南さんもすごく笑顔。
たった数十秒も、こんなつながりも大切にするからこそ、生まれるものがある。
また会いにきてしまいたくなってしまう理由が分かった気がしました。
ありがとうございました。
ライターだより
取材は、小南さんのやさしい笑顔に気持ちがほぐれ、私も笑顔になれる楽しい時間でした。ひとのことを考え、ひとに会って話したいと小南さんが思っているからこそ、小南さん自身が会いたくなるひとになるのだなあと実感しました。私もそんなひとになりたいです。
また、自転車でクレープ食べに行きます!
カメラマンだより
取材中に一番印象に載っている言葉は、自分には大きな夢がないとおっしゃっていたところです。ただ、今ある家族やお店にかかわる人にいい気分にになってもらいたいということに本気でかっこよかったです。仕事の疲れを家に持ち込まない、家事を積極的にするなど、少しずつの家族への気遣いがすごく素敵だと思いました。自分が普段大切にし忘れていることばかりで、もう頭が上がりません……(笑)
Cafe&クレープ Poo’s
営業時間:10:00~18:00
定休日:火曜日・水曜日
住所:東広島市福富町上戸野3445-1
TEL : 082-435-2363
【かいたひと】あみぱん/ライター
福岡出身。サイクリングと映画が大好き。
にほんのはしっこに自転車で行くのが目標。
今年やりたいこと100を考えるのにはまっている。
【とったひと】かんちゃん
カメラマン兼WEBデザイナー。大阪出身。
写真を撮ること、人と話すことがとにかく好き。
人が気が付かない魅力や楽しさを探すことが得意。