聞き手:しゅるしゅる 写真:かんちゃん 編集:みやさこ
広いひろい田んぼと畑。
青くて澄んだ空はどこまでも続いていて、
遠くの方からトンビの声が響いてくる。
ここは東広島市、志和町。
今日はそこで、「夜明けのジョニー農園」という農園を営んでいるジョニーさんの元へインタビューに伺いました。
到着してお家のチャイムを鳴らすと、かっちりセットされたリーゼント姿のジョニーさんと、やさしい笑顔の素敵なあゆみさんが出迎えて下いました。
ジョニーさんは、もともと熊本県阿蘇の飲食店で働いていましたが、今は志和に来て農業をなさっているそう。
今回は、そんなジョニーさんと、はたらくことや生き方についてお話ししていきます。
農業を始めたきっかけ
ージョニーさんは、そもそもどうして農業を始めようと思ったのでしょうか。
農業をする前までは、飲食店で勤めていたとお聞きしたのですが…。
それは、自分の納得できるものを自分で作りたいと思ったからだね。
ここに来る前は熊本の飲食店で10年くらい働いていて、そこは遠方から毎年来てくれるお客さんがいるような、いいお店だったんよ。
中でも、お子さんがお店を好きになってくれることが多くて、そんなお客さんたちに少しでもおいしい料理を食べてほしいって思ってた。
じゃあ、「おいしい」って何だろうと考えたとき、
心も体も健康になってもらうことじゃないかと思った。
だけど、店では商売である以上、必ずしも自分が良いと思う食材や調味料だけを使うことはできなくて、その矛盾にモヤモヤしてきてしまったんよね。
そんなとき、オーナーがずっと自分に言ってくれていた「自分のやりたいことやって食っていけ」という言葉を思い出して
食べてくれる人に美味しいと思ってもらえるだけじゃなく、
心も体も元気になってもらうために農業を始めようと思ったんだ。
ジョニーさんの作るお野菜は、それぞれの野菜らしさが存分に出ている気がする
ジョニーさんは、静かに、でも意志のこもった声で話して下さいました。
お話を聴くうちに、私の中に一つ気になることが浮かんできます。
大切なものを、みんなの手に届けたい
みなさんは、農業にどんなイメージを持っていますか?
私は、農家として働くことにはあまりいいイメージを持てていませんでした。
土をいじったり野菜を収穫したりするのは楽しくても、
あんなに広い面積で作物を育てるというのは、あまりに大変なことが多いのではないかと。
ジョニーさんは、どうして「農業」を選べたのでしょうか。
ー農業って大変な場面も多いんじゃないかと思うのですが、
どうして「農業」を選ぼうと思ったんでしょうか。
まず、飲食店で働いてるうちにその土地のものを使うこととか旬のこととかが気になり始めたんだ。
そこから、自分のやりたいと考えてた無農薬・無化学肥料の農家さんって案外少なくて
世の中にそういう食べ物があまり出回っていないことに気づいた。
とても大切なものなのに手に届きにくいんだってわかったから、
それなら自分が生産する側になろうって考えたんよ。
生産する側になることで、作物を得られるだけではなく季節に合わせた暮らしができるようになったそう。
このお話を聴きながら、
イメージがどうとかじゃなく、自分の興味のあることに向かって素直に行動できるジョニーさんのすごさをひしひしと感じました。
農業の魅力は、「のりしろみたいな時間」を得られること
ー自分がやりたいと思ったことを行動に移せるところ、見習います!
では、ここまで農業を続けてみて、ジョニーさんが思う農業の魅力ってどういうところでしょうか?
まず一つ目は、のりしろみたいな時間を得られるところかな。
俺は、農家として独立する前に熊本の阿蘇の有機農家で修行していたんだ。
そのときに育ててくれた師匠は、ここからここまで草取りしてね って何十メートル四方の一角を指してそう指示するときもあって。
振り返ってみると、その草取りを無心になってやっているときが
今までの人生で一番大切な時間だったと思う。
草取りをするって単純な作業で頭を使わないから、
その分自分と向き合う時間になるんだよね。
例えば俺は、草取りをしながら これからどうやって生きてく? どんな農家になる?ってじっくり考えてた。
のりしろのような時間。
日常は、やるべきことに追われたり、今やらなくてもいいことに手を出したりして、
案外「余白」がなかったりします。
そんなとき、無心になって行える作業が、自分を一回立ち止まらせ、思考する余裕を作ってくれるのかもしれません。
どんな仕事も活かせる「百姓」
ーのりしろみたいな時間って、日常の中の「余白」の時間ということなんですね。
自分と真正面から向き合うことはなかなかないので、本当に貴重な体験だったのだろうなと感じます。
他に農業の魅力だと感じるところはありますか?
あとは、今まで身につけてきたどんなスキルでも活かせることも、農業の魅力だと思う。
自分と真剣に向き合った結果、今の仕事よりも農業のほうが自分に合っていると感じたとき、今まで積み重ねてきたことがゼロになるんじゃなくて、それぞれ農業に役立っていくんよ。
例えば、前にIT企業で働いていた農家さんだったら、販売する野菜とかをネットで広報するのがすっごく上手だったり、
もともと建築系で働いていた農家さんなら、いろんな便利なものを作ってくれたりするよ。その人のおかげで野菜を洗う時に腰が楽になったんよ(笑)
農業ってしんどいとか汚くなるとかマイナスなイメージを持っているひとも多いかもしれないけど、みんなが思っている以上にクリエイティブなところもあっておもしろいんだよ。
これが便利な装置の一つ。野菜を洗うとき、腰をかがめなくて済むようになったそう。
農業をするひとのことを「百姓」とも呼びますが、さすが、「百」とつくだけあります。
様々な仕事を活かすことができるのだと気づきました。
インタビューの中には、
ラブリー人参を、いつもの円錐の形からハートの形にしたいんだ!どうやったらできるかな?と目をきらきらさせながら話す場面も。
心から楽しんでいるのだとわかる目をしていました。
これから農業とどう向き合うか
ーでは、最後に。ジョニーさんは今後、農業とどのように向き合っていきたいですか?
さっきも話したとおり、農業は今まで身につけた色々なスキルを活かすことができる。
だからこそ、新しいことをしてみたくなったときに挑戦できる場所にもできると思うし、
悩んで苦しんでいたり心が疲れてしまったひととか、これからどういう仕事に就こうか迷っているひとにも、「農業悪くないよ」って、選択肢として提案できればと思う。
旬に合わせて季節を感じながら、「暮らし」 をベースに農業をしてみたら、なにかつかめるものがあるかもしれない。
楽しんで暮らしている姿を見てもらって、あとに続いてくる人が増えるなら嬉しいな。
ジョニーさんは、ときおり私たち学生にも意見を求めながら、真剣にお話をしてくださいました。
ジョニーさんの探求心と謙虚さにも気づくことができたと思います。
これからの進路に悩み始めているさなかのインタビュー。
ジョニーさんと語り合ってみて、
悩みながら自分のやりたいこととよくよく向き合って、自分の興味に正直に生きようと、そう決めました。
まずはジョニーさんと一緒に草取りをやってみよう。
カメラマンのかんちゃんも一緒に。
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こぼれ話
インタビューが終わってから、みんなでジョニーさんの畑と鶏小屋に連れて行っていただきました。
はじめに行ったのは人参の畑。
オレンジのいつも見る人参だけではなくて、黒い色の人参や、片手の中に包み込めるくらい小さな人参など、個性の豊かさが際立っていました。
スーパーによく並んでいるサイズの人参と、小さくてかわいらしいラブリー人参
次は鶏小屋。
鶏にぶつかるくらいすぐそばに行きました。
鶏って思っていたより背が高くて、トットッと走る姿は少し怖いようなかわいいような、不思議な感覚がします。
私は、そもそも鶏を生で見るという経験が数回しかなかったので、
いつも卵と肉をくれる鶏が目の前にいることに感動しました。
「生かされている」ということを実感できる体験。
ジョニーさんのもとへ行くと、人間として精神的に成長していける気がします。
ライターだより
ジョニーさんとお話ししたことで、
「自分自身と本気で向き合える時間と場所をくれる」
これが農業なんだと気付かされました。
これからどんな風に生きていこうか悩んでいるひとは、
ぜひ土を触りに行ってほしいです。
私も行ってきます。
カメラマンだより
実は、僕が個人的に去年一年間、ジョニーさんのもとで農業を教わっていたこともきっかけで、今回のインタビューが行われました。
ジョニーさんは、ほんとに僕ら学生に優しく、自分の納得する生き方を見つけておられ、尊敬しています。
ライターさんがちゃんとジョニーさんの雰囲気をくみ取ったやさしい文章を書いてくださり、僕もすごくうれしく思います。僕もやさしさを写真で残せたかなあと思っています。
ぜひ、ジョニーさんに会いにいってみてください~!
夜明けのジョニー農園
住所:東広島市志和町志和堀4440
電話番号・FAX:082-433-2993(金子)
090-5470-0160
メール: johnnyfarm2014@gmail.com
Facebook:https://www.facebook.com/yoakejohnny
ホームページ:https://johnnyfarm.jimdo.com/
【かいたひと】しゅるしゅる
カメラマンたまにライター
カメラと写真が大好きで、最近はポートレートを撮りたくてうずうずしている。
好きな食べ物は噛みごたえのあるもの。特にイカが良い。
【とったひと】かんちゃん
カメラマン兼WEBデザイナー。大阪出身。
写真を撮ること、人と話すことがとにかく好き。
人が気が付かない魅力や楽しさを探すことが得意。