聞き手:らぶ 写真:るなちょふ 編集:あゆ
木漏れ日が降り注ぐ雑木林を抜け、たどり着いたのは少し開けた明るいところ。
深呼吸をすると澄んだ空気が肺に流れ込み、肩の力がすとんと抜ける。
西条より北、福富町にある宮崎神社はそんな自然に囲まれた神社だ。
神秘的な光景に目を奪われました
敷地内はとても広々としていました
些細なきっかけで人生は変わる
柔和な笑顔と丁寧な口調で私たちを迎えてくださったのはこの神社の宮司である井口貞春(いぐち さだはる)さん。
エンジニアから一転、宮司になったのち、様々な活動を精力的に行っている。
すごく物腰が柔らかい方で、こちらの緊張もすぐにほぐれました
ー どうしてエンジニアから宮司になる道を選んだのですか?
井口さん:元々は私の父が宮司をしていたんですが、私は神社を継ぐ気はさらさらなかったんです。普通に勉強してエンジニアになって、それで食べていくつもりでした。
でもある時父親の様子を見て、あ、忙しそうだなって思ったんです。
それでまぁ、父も歳だし、手伝ってみようかなと思いまして。
ー 親孝行、のような感じですか?
あ、そうですね。まさに軽い親孝行のつもりで始めました。
今ではすっかり宮司の仕事にのめりこんでいますが・・・(笑)
ー のめりこむようなきっかけはありましたか?
色々と時代の波にもまれたのもありますが、大きな要因は憧れですね。
あるとき伊勢神宮で奉仕をされている神主さんの姿をお見かけして、その時あ、かっこいいな、自分もああなりたいなって思ったんです。
そこから宮司の仕事にのめりこむようになって今に至ります(笑)
境内には井口さんが好きな招き猫がたくさん
なにかを好きになる。誰かを好きになる。
新しいことを始める。ずっと続けていたことをやめる・・・。
なんにせよ人がなにかをする時には必ずきっかけがある。
それが時には自分の人生を180度違うものにするかもしれない。
井口さんのお話を聞いていると、自分の人生を変えるきっかけは実はものすごく些細なもので、案外すぐ近くに転がっているのかもしれないと思った。
本質は変わらない
井口さんは宮司になった後、ドローンを用いて神社の広報活動を行ったり、youtubeで動画の投稿を行っている。
神社に対して漠然とあるしきたりや慣習に縛られた、堅苦しいイメージ。
井口さんの活動はそんな神社のイメージとは真逆のように自由で独創的だ。
どうしてそんなに自由に活動できるのだろうか。
ー 広報にドローンを導入したり、youtubeで動画を投稿なさってるとお聞きしたのですが・・・
そうですね、色々好きにやらせていただいています。(笑)
ドローンもYouTubeも基本的な動機は同じで、こんなことやったら面白そうだなって思って始めました。
ありがたいことに同業の方からも概ね好評で、「君にしかできないね」と言っていただいています。
ー そうなんですね!
ー 私の中のイメージとして、神社ってなんとなくしきたりや慣習にとらわれている感じがしていましたが、そんなに自由に活動できるものなんですね。
町おこしに活発的な地域ということもあって、宮崎神社でも色々と挑戦させていただいています。
加えて、自分は神主としてはペーペーですのでやれることは何でもやってみよう、怒られたらその時考えようと思ってます。(笑)
まぁ、あとはちゃんと正当に神様にお仕えしている宮司さんはたくさんいらっしゃって、そのような方たちがいてくださるので私は新しいことに積極的に挑戦できています。
ー お手本のようなものでしょうか?
ああ、そんな感じですね。
脇道に逸れ過ぎていたとしても、先輩方を見て軌道修正ができるんですね。
あれ?自分が今やっていることは本質から外れているぞ?というような感じです。
軸がしっかりしているので、本質というか根本にあるものがぶれることはないんです。
ー 本質というと?
私がやっていることの本質というものは神様にお仕えするということ。
神社のこと、神道のことを皆さんに知っていただく。そのために活動をする。ただ伝え方や見せ方を変えただけでそれは古くから変わらないものなんです。
よく新しいことを始めようとする新進気鋭の方たちは古いものを壊したり、否定することで自分たちのやり方をアピールします。
ですが神社の気質は保守そのものです。私も伝統や古いものを壊したいとは思っていません。変えてはいけないもの、やってはいけないことを常に見定めながら活動しています。
ー 変えてはいけないものと自分のしたいことの兼ね合いというかバランスって結構難しいと思うんですが・・・
そうですね。とても難しい問題です。
私の場合は、私なりの奉公をしていけたらそれは本質からずれることはないのではないかと思っています。
ー 井口さんなりの奉公ですか?
「滅私奉公」という言葉をご存ですか?
自らを滅して主君や神に仕えるという意味なのですが、私はそれをもじって「かっしぼうこう」という言葉を常に念頭に置いて活動しています。
ー 「かっしぼうこう」?
「活私奉公」ですね。「私」を滅するのではなく、「活かす」。
私なりに神様にお仕えしていけたらと思っています。
ドローンの使用やYouTubeへの動画投稿はエンジニアだった経験を持つ自分だからこそできる奉公のあり方だと考えています。自分の特技を活かして神社や神道のことをお伝えしていけたらと思っています。
何か行動を始めるときぶれない芯を自分の中に持っておくことはとても大切なことだと思う。
自分なりの方法を試しながらも本質にあるものを考える。
本質をぶらさないようにしつつも自分の個性を消すことはない。
井口さんがやっていることは新しいことを始める時に忘れてはいけないことなのかもしれない。
ライターだより
自分は御朱印を集めるのが趣味なのですが、肝心の取材の時に
御朱印帳を持っていくのを忘れました。
なので次は御朱印をもらいがてら宮崎神社のあたりをお散歩したいなと思っています。
カメラマンだより
行動力。それは大事とわかっていてもなかなか実行できないものだ。また、自分がしたいことでも周囲からの目線などを気にして、やらず仕舞いに終わることも多い。しかし、宮崎神社の井口さんは、まず行動すること、自分の考えを大切にする生き方をされており、とても刺激を受けた。人として大切なことを教えてくれる宮崎神社。悩みがあったり、行き詰まったり、または何となくでも再びこの神社を訪れたい。
宮崎神社
受付時間午前9時~午後9時
住所:〒739-2302 広島県東広島市福富町下竹仁71-1
TEL/FAX: 082-401-2767
ホームページ:http://miyazakijinja.shakunage.net
【かいたひと】らぶ / ライター・広報
広島出身。梟と柴犬をこよなく愛する。
Twitter→@Ucchiy_owl
【とったひと】るなちょふ/カメラマン
広島県尾道出身。大きな体で大きな心が目標。エモい写真が撮れた時のにやけは見られたくない。
instagram:@kism_hxy46