聞き手:かんちゃん 写真:ムロ 編集:しおね
3月16日、西条でもほんのり雪が降る少し寒い日、広島大学の中で取材を行いました。
集合時間少しすぎてふっと現れたのは仁科勝介さん(通称かつおさん)。
広島大学の卒業生で、3年次から休学し、約2年かけて日本の全市町村を回った写真家です。
今年から地元の写真館で働かれています。
そんな日本全国を回ったかつおさんに、旅のお話や、東広島の思い出について聞いてみました。
かつおさんの日本一周の旅
ー 日本一周、市町村を回ろうと思ったきっかけはなんだったんですか?
九州のヒッチハイクかな。1年生の夏休みの初日に飛び出して、そこでいろんな方に乗せてもらって、自分の日本に対する井底の蛙さというか、無知さを感じて。それから学生のうちにもう一度何かできないかを考えて、世界一周、ワーキングホリデー、いろいろ考えた中で日本一周が一番引っかかった感じ。
ー 市町村の捉え方としては都道府県をじっくり見ていくという感じですか?
うん、そうだね。もちろん有名な観光地にも行ってみたいし、できるだけ細かくも巡りたくて。その一番小さな単位が市町村だった。それで日本の市町村を全てみて回るという自然な形になっていったかな。
あんまり部分的に見過ぎてしまうと考え方が偏ってしまう。福岡のイメージが博多だったり、兵庫なら神戸だったり、愛知なら名古屋だったり。有名な都市はあるけれど、市町村としてはめちゃくちゃ部分的なわけで。
例えば「このまちを知ってる」という話になったときに、そのイメージがそれなりに強いと、他の地域が見えづらくなる。色んなまちがあるよねと口で言ったりするの簡単だけど、できるだけ自分の目でみたかったかな。
ー そうだったんですね。その日本一周の旅って結構孤独じゃないですか、やめたくなることはなかったですか?
やってる立場としては、もちろんすごく寂しいし、もちろんめちゃくちゃきつい。
感覚としては1限目の前に朝練に出て、1限から5限で授業に出て、そのあとサークルに行ってバイトして日付が回って寝てまた朝練って言うのを週7でやってる感覚。
ー それは好きな写真を撮る旅であってもきつかったですか?
そうだね、移動がほとんどだし。
でも行く先々は絶対に自分が知らない場所だったりするわけ。だから進めば進むだけ知らない日本があるっていうのはきつくても面白いと感じる部分ではあったね。あとは自分で決めたことだから、あまり自分に嘘は付けなかったかな。旅をやるって言ったんだから自分の中で筋を通そうっていう思いはずっとあったね。
あとそれでもめちゃくちゃきついときには、人と会ったりするとすごく気持ちがリセットされるし、また頑張ろうと思えたかな。
ー 例えば宿とかで、会う予定で会う人もいるけど、タクシーの運転手さんとか偶然出会う方とも仲良くされてますよね。あのような出会いはどうやって生まれるのですか?
やっぱり目を見て挨拶することかな。「おはようございます!!」って。
知らない人に話しかけるときって、相手が警戒するんじゃないかと思って抵抗しちゃうよね。一歩引いてしまう。でもそれって、自分が警戒しているからなんだよね。自分が警戒せずに、おじゃまさせてもらっていますという気持ちを持って挨拶とかお話をさせてもらったらみなさん本当に全然意に返さず優しくしてくださってるっていう感じかな。
ー 移動とかが大変だったと言われてましたが、そういう一人でバイクを走らせている孤独な時間に思いを馳せるものって、やっぱり普通の学生生活だったり自分が今送っていない生活だったりになりますか?
それは結構面白くて。旅の前半は、初日に怪我をして、再開してしばらくの数ヶ月間っていうのは、自分がしてることに対しての自問自答っていうのは本当にすごくあって。みんなはすごい楽しそうなキャンパスライフを送っているし、同級生が就活をしているタイミングだったからみんなそれぞれ自分の人生を決めようとしててさ、進んでるんだよね。だからそのなかで、なんでこんなことしてるんだろうとか本当にこれで良いのかなって思いつつやってはいたね。
でも、もう旅の後半になってきたら”無”なんだ。全然何も考えない。それはなんかこう、考えなくてもよくなったんだよね。自分はこれをやっているんだから、もうどうしようもないみたいな感じで、あとは自分のやることをシンプルにやるだけだって思うようになったね。その考えになってからの方が全然楽だったね、やっぱり。
ー 僕だったら旅の前半の時に大学で友達と過ごしたいという気持ちが強くなりそう……。
それをかつおさんは自分でどう納得させてましたか?
全然それでいいんじゃない?それは友達と過ごさないと!
何かをする上でみんなそれぞれ思いを持っていると思うけど、無理をしてまでというふうには思わないかな。自分にとって旅は無理矢理しているわけではなくて。背伸びしようと思わないというかさ、カッコつけようとはしないというかさ。自分が何かをする上で、自分の中で心がすっきりすればまずいいんだよね。それでこう、周りの反応がどうであれ、自分の心で決断した結果は後から点で繋がってくるものだし、こうしなきゃいけないとか、こうあるべきだとかは俺はあんまりそうは思わないかな。だから、大学で友達と過ごしたい人はそうした方が良いし、それが心に従っていることなんだからさ、その人にとって確実に正解なんだよね。その人その人の道っていうのは自然にあると思うね。
ー いい言葉ですね。カッコイイ!!!
そう?じゃあ5倍くらいカッコよくしてね(笑)。
でもいつも大体著名な人たちが言ってることって同じだなって思う。岐路に立った時の考え方とか辛い時の乗り越え方とか、それぞれ生きてきている背景が違うからいろんな言葉とかいろんな言い回しがあるんだけど、やっぱり皆さんが持ってる考え方っていうのはいつも素敵だし共通している部分があるなと思う。
ー それはかつおさん風にいうと?
例えば、人生いろんな選択肢があるのであれば、選択肢が迫られている状況であるのであれば、もちろんまず考える。でもきっとそう考えただけでは本当の答えは出ないんだよね。でもあれこれすごく考えた中で、いちばんそこで最後に頼るのは心の中の感覚、一番すっきりする方だよね。だから、もう、その時点で仮に自分がスッと「あ、多分こっちの方がいい」って思う感覚があるのであれば、もうそれで正解なんだよね。その時点で正解なんだよね。その先の結果がどうとかいう問題じゃない。仮にその選択肢を選んで、それで過ごしてみて、見かけ上の失敗があったとしてもそれは正解だということなんだよね。なぜなら自分の心に嘘をついていないから。そうやって物事を考えていけば、日々反省することはあっても、後悔しなくていい。自分に納得しながら生きてるからさ。それでまた失敗したら反省すればいいし、笑い話にも変えたらいいしさ。
かつおさんと東広島
ー 全市町村廻られた人から見た東広島はどう映って見えますか?
東広島は何か、みかんとりんごが取れるって話聞いたことがある?
聞いた話だけど、みかんって和歌山県とかあったかいところで採れるものだし、りんごって青森県とか寒冷な地域でしか採れないよね。それが同じ地域で取れるのが意外とないんだよって言われたことがあったような気がする。
まるで違うよね。それこそ今日も志和のうちは朝めちゃくちゃ積もってたし、真っ白だったけど、多分気候はまるで違うし、自治協が47もあるから広いよね。とても広いと思う。
特徴としては大学が大きなキャンパスであるっていうのはとてもとても少ないね。だからこう学生がこの環境を、別に普通に過ごすのは間違いではないけど、シンプルにただ何もないところだって言うだけなら多少はもったいないのかもはしれないね。なぜなら全国でこういう場所はとても少ないから。
ー こういう場所って言うのは具体的には?
地方でこれだけ若者がいるまちっていうこと。東広島市は規模もやっぱり大きくて、まちもそれなりに大学があることを基準としている部分もあるわけであって、だからこう、ないものを探すというよりかは、ないものはないんだから、今このなかであるものを一つくらい見つけられたら面白いんじゃないかな、とは思う。
ー 僕はmahoLabo.の活動を通して地方ながら東広島のポテンシャルを感じることはたくさんありますが、かつおさんからみてどう感じますか?
あると思うよ。規模としてはまあまあでかいと思うよ、みんな田舎って言うけど(笑)。
全国的に見ると全然小さくはない、けどまあみんな上を見るからそうやって言うけどね。もっと果てしないところなんていくらでもあるからね。
ー 東広島でかつおさんが好きなところを選ぶとするならどこですか?
乃美別府とかかな。バス停で帰りを待つ高校生とか見ていいなと思ったけどね。
ふるさとの手帖より
こちらのリンクからご覧ください
https://katsuo247.jp/post-1173/
もちろん今いる志和は好きだよ。みんなあったかくて、ご近所さんはスーパーマン。何かトラブルがあったらご近所さんが助けてくれるしさ。なんでも、本当になんでも助けてくれるよ。
かつおさんの今後の展望
ー 今後、写真家としての成長の仕方とはどのように考えてますか?
シンプルに自分の就職先の写真館さんでやれることをやるっていうことしか目の前にないね。先々のことは今はあまり見えてこないかな。でも写真でいろんな表現ができたらなって思いもあるかな。
見えてこないのであればもうその日その日のベストを尽くすしかないんだよね。その延長線上だからさ、シンプルだよね。すごくシンプル。
ー それは何事においてもですか?
そうだね、何事においても。一日一日、そうやってベストを尽くせば後悔することもないし。
写真だけじゃなくて、ちゃんと食べ終わったご飯の食器をすぐに洗うとか、脱いだ靴をちゃんと揃えるとか、日常に寄り添ったことかな。
ー そういう一個一個が後悔しない選択に繋がりますか?
まあ、なんだろう、自分が寝る時に今日一日いい日だったっていう感覚があればそれはそれでいいんじゃない?わーっと遊んでもそれはそれでいい一日な訳さ。
ただなんか、自分が決めてる範疇の中でちょっとこう、うーんって思うようなことがあるならそれは反省する。後悔することはないけどね。明日からまた切り替えてって、その積み重ねかな、いつも思うことは。旅してる間ってさ、その日その日ひたすら進むことしかできないんだよ、別に小細工どうとかの問題じゃなくひたすら朝から晩まで進んで、それでも旅全体の1%も進まないんだけどさ。今あるのってただのそれの積み重ねだからさ、これって日常生活も一緒だよねって話かな。
ー 今後も旅をする予定はあるんですか?
予定はないね。それってもう仕事辞めちゃってるからさ(笑)。予定は全然ないかな。まあでも、そういうのはいろんな縁が重なってできるものだからさ。
ー 次もし旅するのであればどんなテーマになると思いますか?
無理をしていないから前よりすごいテーマでやろうとかは考えてないかな。
全然もう、ぶらり温泉旅とかもいいしさ(笑)。
ダサくてもいい、けど何かしらテーマを決めるのであれば、仮にもしそれを見てくれるのであれば、その人たちが見ててちょっとほっこりするような仕掛けじゃないけど、企画っていうのはすごく考えるのは好きでさ。今回はたまたま市町村を回ってて、その写真が全部あったからそのサイトで写真が全部見れるっていうのがすごくいいなと思ってやったんだよね。全然どんなテーマでもいいから、みんなが幸せになれるような物ができたらいいのかなって思ったりするかな。
ライターだより
今回、普段聞くことのない、かつおさんの旅の話や精神面の話が聞けて面白かったです。広島大学のカメラマンといえばかつおさんで、僕にとってすごく尊敬できる大学の先輩でもあります。これからの活躍も楽しみにしています。
カメラマンだより
かつおさんと会うのは今回が初めてでしたが、前々から名前は知ってたので本当に会うのが楽しみでした。僕も旅と写真が好きなので色々な話が聞けるととてもワクワクしていました。取材中も話に夢中になりすぎて、途中シャッターを切るのを忘れてしまうときもありました(笑)実際のかつおさんは本当に謙虚で、とても話しやすい方でした。その性格がみんなに支持される理由でもあるんだなぁと思いました。かつおさんをこのような僕が撮るのは、畏れ多いところがありましたが、いい経験が出来ました。
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