子ども食堂のお母さんがつくる、八本松の居場所/さとの会代表 宮田朋子

 

聞き手:あかりん 写真:てるちゃん 編集:しおね

 

子ども食堂 さとの会

 

東広島市には、さとの会が運営する子ども食堂が4つあります。

今回の取材先は、取材チームが今年の3月からボランティアとして参加している八本松町の子ども食堂。第三土曜日とその他月1~2回、下組集会所で開かれています。

集会所につくと、今日も、奥からにぎやかな声が聞こえてきました。

代表の宮田さんを含め、スタッフの方々は、朝早くから仕込みを行っています。

 

 

食材は社会福祉協議会やひろしまこども食堂支援センターなどの支援で頂いたものや宮田さんのお庭で育てたもの。旬の食材や調味料にこだわっています。

 

こちらのトマトは東広島市のまちづくり応援の補助金で「とれたて元気市となりの農家店」から購入したもの

 

 

 

早速、私たちもお弁当作りに参戦。できることは少ないですが、皆さんに教えてもらいながらのスタートです。

 

今日のメニューはコロッケ・インゲン豆のごまあえ・コールスローサラダ

牛肉としめじのプルコギ風・きんぴらごぼう

 

新型コロナウイルスの感染拡大以前は、子ども食堂に集まるひとたちみんなでご飯を食べたり交流をしたりしていたそうです。ご飯ができるまで、子どもたちは宿題をするなど、自由な時間を過ごしていました。しかし、2021年2月からご飯を食べる日とは別に、子どもを対象にした交流活動を月1回行っています。SDGsの学びや工作等を行っています。

 

さとの会ができるまで

 

みんなの居場所「さとの会」をつくるまでには、長い道のりがあったようです。

 

宮田さんを含め、お手伝いに来られた7名の方からお話を伺いました

 

― さとの会で大切にしていることは何ですか?

宮田さん)さとの会の「さと」は「S しゃべる A 集まる T 食べる O 自分と相手のことを”想いやる”」この頭文字をとって名づけられたんよ。プラスで絶対忘れちゃいけんのが、安心して過ごして、安心してしゃべれる、地域の居場所になることじゃね。

 

― さとの会を開くにあたり、「さとにきたらええやん」という映画の上映会がきっかけになったと伺いました。

南有田さん)子どもたちの安心する自由や権利を守っていくCAPという教育プログラムがあって、その情報誌の中に、「さとにきたらええやん」という映画の紹介がありました。この映画の上映会をやってみようと宮田さんに伝えたことがきっかけで、みんな集まったの。「子どもたち一人一人を大事にしていこう、権利を守っていこう」というのが根底にある映画だったので、それに共感して集まる仲間というのは、やっぱりひとを大切にしたいという気持ちを共通して持っていると思う。

 

 

有田さん)中心にいるひとたちが、子育て時代からの知り合いなんよね。だから、「子どもたち一人一人を大事にしたい」という想いがみんな根底にある。

宮田さん)有田さんとは何十年と付き合ってる。南有田さんともね。

南有田さん)同じ方向を向いているよね。

 

 

中森さん)上映会を開いて、子ども食堂を始めようとなった後一年間、宮田さんはいろんなところに出向かれてね。宮田さんが丁寧に進められた結果、今があるんだと思ってる。

宮田さん)そう。皆さんと「これはほんとに居場所なんじゃろうか」って色々話しあって。いろんなところを見に行って、「ほんとに大丈夫なん」って、私の心の中でストンと落ちるまで二年かかった。「あんたなんしよんね、はよしんさい」ってみんなに言われたけど、やっぱりみんなの気持ちとベースを作るには時間がかかるし、時間をかけたことが今となってはよかったなと思う。

 

さとの会は、子育て時代からの仲間を中心に立ち上げられました。子どもの権利を守りたいという思いは同じ。しかし、子ども食堂さとの会としてスタートするには、組織としてのベース作りが必要でした。

宮田さんは、細く長く活動を続けるために、思い切って行動を起こすだけでなく、丁寧かつ慎重に準備することで、みんなが納得する八本松の居場所を作り上げてきました。

 

子どもだけじゃない、地域みんなの居場所

 

左上から、山本さん、中森さん、中谷さん、有田さん

左下から、南有田さん、宮田さん、ライターのあかりん、見学で来られた平賀さん

 

参加されているスタッフの方々に、皆さんにとって子ども食堂とはどんな場所か伺ってみました。

「いろんな方と出会え、考えを共有できる地域の居場所」

「ホッとする居心地がいいところ」

「みんなが主役で、活動が喜びにつながる場所」

皆さんの答えから、子ども食堂は子どもたちのためだけではなく、さとの会の活動を行っているスタッフの方々の居場所でもあることが分かります。

宮田さんのモットーは、「一人一人に任せつつ、全体の流れに心を配る」こと。その思いがスタッフの方々の心にも届いているようです。

 

― 子ども食堂は、「子どもだけが対象」と思われやすいですが、そのことについてはどうお考えですか?

 

 

中谷さん)友達に「子ども食堂、私たちもいっていいの?」と聞かれる。やっぱり、子ども以外は行っちゃいけないようなイメージでね。「誰でも来ていいんよ」と思う。居場所づくりなんで。

山本さん)みなさんに、「ご飯の食べられない子どもたちがいるの?」って聞かれるけど。「いろんな子どもさんがいるよ、でも、そういう目的だけじゃないんだよ」っていうのを発信して、たくさんのひとに知ってもらいたいと思っている。

 

 

イメージや先入観、偏見。ついそれらに引っ張られてしまうことがあります。私自身、参加するまでは、子ども食堂の役割を理解できていませんでした。お弁当配布は子どもだけでなく、子育て中のお母さん、大学生など幅広い年齢層の方に行っています。自分の目で見て学んだ子ども食堂の「居場所づくり」。これを記事で発信することで、地域の居場所へ足を運んでくれる人が増えてくれたらいいなと思います。

 

そのひとのありのままを見るということ

 

 

子ども食堂の活動に参加されている皆さんに、代表の宮田さんはどんな方か伺いました。

「お母さんみたいな方」

「見た通り優しく、ひとを思いやる方」

「しっかり者の頑張り屋さん」

「真実のひと」

「ボランティア精神にあふれる方」

「みんなの太陽のような方」

宮田さんは、皆さんに心から尊敬され、優しさにあふれる方のようです。

お母さんのような宮田さんの信念はどんなものか気になります。

 

― お母さんのようと言われる宮田さんですが、大切にされている考えはありますか?

宮田さん)まず、受け入れることかね。

昔は自分に対するコンプレックスみたいなものが色々あってね。母に叱られても、わかっているけれど受け入れられないという時期もあった。でも母が突然亡くなったとき、母のことをちゃんと理解していなかったんだ、すごいひとだったんだということが分かって。やっぱりひとって決めつけちゃいけん、絶対決めつけちゃいけないと反省したんですよ。

だから、自分にとっては理解できないひとに対しても、「こういう考えがあるんかもしれん」とまず、考えて立ち止まって、受け入れてみる。そしたら、こういうスタンスで生きとってんじゃな、っていうのが分かってきて、対応の仕方もわかってくる。受け入れる、というか理解するというか、そんな感じかなと思います。

 

 

私は、ひとのことを受け入れることがまだ少し苦手です。なんでそんなことを思うのだろう、分からないなと悩んでしまうこともあります。受け入れるということは綺麗事のように聞こえるかもしれないし、そんなに簡単にできるものではないとも思います。でも、理解しようとする姿勢を持つことが、否定ではなくありのままを受け入れる一歩になるのかもしれません。

 

居場所づくりは無理をせずに細く長く

 

 

取材中、宮田さんはお弁当を受け取りに来た方のところへ急ぎ足で向かっていました。顔を見て少し話して、お弁当を手渡す。宮田さんの大事にする「つながり」の形が見えたような気がします。

 

― 宮田さんは、今後子ども食堂を続けていくにあたり、大切にしていきたいことはありますか。

宮田さん)できることをやる。できないことはしない、無理をしないことかな。私がずっとお弁当を届けている子がいて、その子に対して、私が何も役に立てていないというのがつらいと思うときもあるんだけど、「私は見捨てないよ、絶対つながれるよ」という想いを届けるだけでいいのかなと最近思い始めた。つながってるからって。私が見捨てることはないし、向こうから見捨てられることもないだろうなという感じ。本当につながれていたらいいなと思います。

 

 皆さんは、子ども食堂を続けるにあたって大切にしたいことはありますか?

南有田さん)続けることかな。それだけ。あまり欲張らずに。私が思うのは、できる範囲で、あんまり個人の負担にならんように。

中谷さん)つながりかな。さとの会の交流でね、知り合いの近所の子どもたちや初めて出会う子どもたちとの仲が深まるきっかけになるのよ。たまたま会ったときに名前を呼んで話しかけてくれたりね。そういうあったかい横のつながりが地域のつながりになってほしい。

有田さん)宮田さんの家がある団地はね、今居場所があるという意味ですごいいいなと思うよね。そういう中心の場所になっている。居場所をつくるって、なかなかできないよね。

宮田さん)歳があるから、何歳まで生きれるかなとときどき思うんだけど、色んなひとが集まる場所を残していけたらいいかな。これも私は時間をかけて、のらりくらりと。

 

最後には、宮田さんの人生観や今後の展望を伺うことができました。一人一人に任せ、みんなが楽しく活動できること。宮田さんのそのスタンスは揺るぎないものです。

八本松子ども食堂さとの会では、6月から、刺繍体験などの交流も再開しています。8月には地域の子どもたちが集まって夏休みの宿題をしたり、夏祭りを開催したりする予定です。

皆さんの力で成り立つ、子ども食堂さとの会は地域みんなの居場所であり続けます。

 

 

私たちも取材後、駅のホームでおいしく頂きました。頑張って作ったお弁当。皆さんに「おいしい」と思ってもらえたら嬉しいなと思います。

これからもボランティアとして参加し、地域の居場所づくりを学んでいきたいです。

 

 

八本松 さとの会

■住所 〒739-0142  広島県東広島市八本松東5丁目6−23 下組集会所

■活動日 月2~3回活動 

    第3土曜日弁当配布・その他の日程での弁当配布不定期・交流活動は月1回不定期。今後新型コロナウイルス感染症の様子を見て食事と交流を同日に行う予定

■TEL 090-4577-1832

■メール satonokaihachi@yahoo.co.jp

 

 

ライターだより

記事を書きたいと思って2年半。私のデビュー記事です。「動き出したい」そんな思いから子ども食堂さとの会でボランティアを始めました。月に一度、お弁当を作りながら、皆さんと交流する。私にも新しい居場所ができたようで嬉しいです。

 

カメラマンだより

おいしそうな弁当だ。それが第一印象でした。さとの会の方々が色々な想いを持って、そして願いを込めて作ったお弁当。そのお弁当で生まれた笑顔がとても印象的でした。

 

編集だより

取材を依頼したとき、宮田さんが「ぜひ、皆さんにも参加していただきましょう」と言っていたことを思い出しました。対談に参加されているスタッフさんの言葉を真剣に受け止めながら、自身の話を進める宮田さんの様子が、とても心に残っています。

 

 

【かいたひと】あかりん/ ライター

広島県出身。ねことお花とかわいいものが好き。

柳のように生きることが目標です。

 

 

 

【とったひと】てるちゃん/ カメラマン

広島県出身で、初恋の車であるトヨタの80スープラが欲しくてたまらない大男。

特技は食べることとぼーっとすること。

         Instagram→terumi1386