「お菓子を通してひとを想う」シェフから学ぶ今できること/御饌cacao 三宅崇

    

聞き手:ゆっこ 写真:ぐらふぃー 編集:ひかりん

 

 

 

一つわき道に入るとお洒落なお店が。

西条、酒蔵通りを歩いていると甘い香りが漂ってきた。思わず細路地にちょっと寄り道。

そこには、ひっそりと通りに馴染んだ古民家のチョコレート専門店。

この店を構えたのは、以前Yeastでも取り上げた「菓子工房mike」の店主、三宅崇(みやけたかし)さん(Yeast (maholabo.com))。新たな一歩を踏み出した三宅さんに、私たちは再注目しました。

 

おなじみのカエルさんがお客様をお出迎えしてくれます。

 

「お菓子大好きシェフ」の探求心は留まることを知らない

 

 

― どうして今回はチョコレートを?

 

チョコレートとは修行を始めた19歳からの付き合いだったんですが、実はどのようにできているか知らなかったんです。でも、8年くらい前にカカオからチョコレートができている事を知って、そこからすごい興味が湧いてきて。2018年からメキシコで、カカオ豆の歴史から勉強を始め、収穫・発酵・乾燥から輸出まで経験しました。

 

 

 

 

 

― ずいぶんと長い間研究されてきたんですね。でもどうして、「菓子工房mike」さんの一角に出すのではなく専門店を作ろうと思われたんですか?

 

バレンタインやホワイトデーの時に、広島パルコさんで8種類のチョコレートを酒蔵と連携して出していたんです。それが好評で、年中販売できるところがあるといいな、西条がお酒のまちっていうことを知って、来てもらえたらいいなということでお店を出しました。

 

― そんな経緯が。でもなぜ、コラボするときに他のチョコレート菓子ではなくトリュフになさったんですか?

 

トリュフは、18年ほど前に亀齢酒造さんのご依頼で作ったのが始まりなんです。西条には8酒造あるから、全てとコラボしてお酒のまちをPRできるきっかけになればと思ったんです。また西条のお酒は、他の日本酒と比べて甘く口当たりがなめらかだから、それ自体がチョコレートと合いそうだなと。

 

 

8酒造の日本酒トリュフにくわえ、様々なチョコレートが並びます。

 

 なるほど。西条のお酒で三宅さんが好きな酒造さんはどこなんですか?

 

うーん、全部の酒造さんに魅力があって全部好きですね。特にいえば、私は福山で育ったんですが、父が白牡丹のお酒をずっと飲んでいたので私にとっての日本酒といえば白牡丹さんですね。

 

 

白牡丹さんの日本酒トリュフ

 

 

 

「お菓子」を通じてひとを”繋ぐ”

伝統の赤瓦を使用したおしゃれな壁。

 

畳の温かみのあるイートインスペース。(今は感染対策のため閉鎖中)

 

― お店をオープンされたのが2020年の11月だったと思うんですけど、ちょうどコロナが流行りだした時期ですね……。

 

そうですね。観光客を呼ぶためにお店を出したんですけど、それが難しい状況になってしまって、開けたり閉めたりという時期が続きました。

 

 

 

 

― もう少しこういった状況が続くと思いますが、今後のプランなどはあるのでしょうか。

 

ネット通販を強化していきたいけど、去年は売上が上がっても今年も同じようにいくとは限りません。だから、何かを発信する、何かを活用するチャンスなんだろうなと思っています。

 

 

 

 

― 発信するといえば三宅さんは、Facebookやブログを毎日更新されていますよね!

 

はい。できるだけお菓子に繋がる話を探しています。お菓子作りをしているひとがどんなひとか知ってもらって、「こういうひとが作った」お菓子を買ったりプレゼントしたりして欲しいなと思ってるんです。

 

― いつも楽しく拝見させていただいています!特に、結婚27周年のブログは心に染みるものがありました。https://mike-no-okashi.com/%e5%be%a1%e9%a5%8ccacao/6349/

ありがとうございます。僕自身の過去の経験や苦しいときもあったからこそ、そういった境遇の人に共感してもらえたら嬉しいなとも思ってます。だけど、学生さんに注目されてるなら変なことは書けないなあ(笑)

 

― そんなことはないですよ(笑)今後も楽しみにしていますね!

 

 

こんな時だからこそ、家族と”繋がる”

 

 

― お菓子屋さんとして今できることって、考えたことはありますか。

 

そうですね……来てもらうことがはばかられる時期ではあるけれど、お菓子を通じて一年一年家族と年を重ねる大切さを感じてほしいと思っています。

 

 

 

 

― 家族、ですか。

 

僕のブログでは、「デコレーションケーキを大切にしませんか」ということを伝えています。ケーキを買ってくださいというよりも、家族の絆を深めるデコレーションケーキです。

 

― お菓子で家族の絆を深めるって、素敵です!

 

ちょうどもうすぐ父の日ですからね。友達の話とかを聞いていると、母の日よりも大事にされていないみたいで。お父さんが忘れられないでいてほしいなという思いがあります(笑)

 

― SNSが発達した分、ひとに思いを伝えるって気恥ずかしくて難しいです。でも、こうして「お菓子」っていう形で感謝を伝えられるのは凄くいいなと思いました。

 

今、ちょうど長年研究し続けたオペラを父の日に向けて作っているんです。バタークリームと濃厚なチョコレートは男性に好まれるので、このタイミングで作ろうと思いました。

 

― それはすごく楽しみです!!

 

完成したら母の日と同じように、お父さんの顔を作ったチョコレートでまたブログに書きますので待っていてください!

 

 

お菓子屋さんとして、一人の「人間」として。お客様や西条をこよなく愛する三宅さんの思いが、お店からもお菓子からも沢山溢れていると実感した。ひととの繋がりが難しくなった今だからこそ、「お菓子」が人と人を繋ぐ「はしご」になるのではないだろうか。

もう少し落ち着いたら、私も三宅さんのお菓子を片手に、遠く離れた家族に会いに行こうと思う。

 

御饌cacao

 

営業時間:11:00~18:00

     土日祝は11:00~17:00 

定休日:月曜日・火曜日

住所:〒739‐0011 広島県東広島市西条本町15‐25

TEL:082-437-3577

ホームページ:https://mike-no-okashi.com

 

 

ライターだより

元々、とても好きなお店でしたが、今回三宅さんの取材を通してますます好きになりました。ひととの間に生まれた「縁」というのは、偶然の様で必然であると私は思います。三宅さんのお菓子を通して「ひとを想う」気持ちを感じ、私自身もこんな状況だからこそ縁ある大切なひとたちを思いやれるひとになりたいと思いました。今までとはまた違った気持ちでお店に行ける日を、楽しみにしています。

カメラマンだより

お話から、お店の雰囲気から、そして商品から、すべてに込められた想いをカメラのレンズ越しにふつふつと感じました。今回の取材に携わらせていただいて、まだまだ先の見えない不透明な時代だからこそ、「おいしい!」と感じられる至って普通の喜びを、『御饌cacao』さんでひとりでも多くのかたに感じてもらいたい、そんな気持ちになりました。

 

 

 

 

 

【かいたひと】ゆっこ

ライター

さつまいもを愛してやまない博多っ子。人と人とを繋ぐはしごになりたい。

 

 

【とったひと】ぐらふぃー

広島県出身|写真が大好き。音楽も好きです。