シェフが教えてくれた「1.5流の幸福論」/ ビストロフーズ代表 川田昭司

  

聞き手:まお 写真:ゆーた 編集:みやさこ

明けましておめでとうございます!

2019年最初のインタビュー記事は、ビストログループ社長・川田シェフにお話を聞いてきました。
川田シェフは今3つの飲食店を構えており、食育など経営以外にも力を入れている現在53歳の男気あふれる気さくな料理人です。

四月ごろ、何人かで店長が経営しているお店の一つ「パパ吉」で友達の誕生日を祝っていた際、偶然隣の席にいらっしゃり、みんなにデザートをふるまってくださいました。
その時、飲食店の店員はどうあるべきか、など、たくさんの事をアドバイスしてくださった川田社長。今回は、なんのために働くか、についてお話を伺ってきました!

 

おしゃれで落ち着いた内装。

 

ーお久しぶりです、パパ吉ではありがとうございました!みんなで、よかったねーって言ってました笑

 

ほんとに偶然だったね!いつごろだったっけ?

 

ー四月の頃です。下見の居酒屋では一番パパ吉が居心地がいいので、あそこに決めたんです。

 

そういわれるとやっぱり、経営者からしてもうれしいね笑 うちの店、いいでしょ?

 

ーとっても素敵です!ここ、ビストロパパも初めて中に入ったのですが、ずっと居たくなるようねお店です。

 

表情豊かな川田さん。話しているとこちらも楽しくなってきます。

 

 

『枯れた花から学ぶこと』

 

ー早速本題に入るのですが、どうして料理人という職を選んだのですか?
私は教育学部にいるのですが、決めかねているんです。先生にほんとになりたいのかなって。

 

僕も実はシェフになろうと思ったわけじゃなかった。
みんなが就職活動をして、受験勉強をして、でも僕は何もしていなかった。そんなとき、高校にむすびのむさしの社長が講演会に来て。僕は最前列で不真面目に聞いていた。そしたら講演会が終わって、校長室に呼ばれて「おまえ、就職決まってないならむさしどうだ」って。手に職イコール大工かコック。コックはなにか美味しいもの食べれる。じゃあコックになりますって。

 

ーそうなんですか!てっきり高校生のころから、明確に料理人になりたいって思ってたのかと思ってました。

 

ひととの出会いが人生を変えていくんだよ。
高校を卒業してからいろんなところで料理を作った。そして33歳の時に、白竜湖グループの社長に出会って、店を持つことに決めたんです。

 

 

ー地方記事のプレスネットを作ったり、飲食店も経営されていらっしゃる会社の社長さんですね。なにか人生が変わってしまうような一言をいただいたんですか?

 

それまで僕は、ただ料理だけを作っていた。でも15年コックをして、料理以外の、他のことに目を向けなきゃいけなくなった。
お客さんをどうしたら喜ばすことができるか、売上が上がるか、スタッフが気持ちよく働くことができるか。これを教えてくれたのが川口社長だった。

 

ーすごい大変だったんじゃないですか。今まで15年ずっと料理一筋で、急にその事を意識させられるようになって。

 

僕には野球で鍛えられたハングリー精神と、なによりひとの意見を吸収できる力があったからね(笑) 料理以外のもの、ひとを喜ばせる生き方を教えてくれるひとに出会って、自分も店を持ってみようと思ったんです。

 

でもやっぱりすごいしんどかった。お店って、大体オープンまでに半年ぐらいかかるんだけど、その間にさっきの川口社長が所有しているビアガーデンのシェフ、責任者を、修業としてやってみっていわれてやってみたんです。

 

 

ー責任者、ほとんど店長みたいなものですね。それこそ、料理以外の事も気にしなきゃいけない。

 

そうそう。オープンして二週間ぐらいかな、スタッフに花が枯れていますって報告を受けた。だから社長に、花が枯れたので新しい花を買ってくださいってお願いしたんです。
そしたらね、もうすっごいどやされたよ笑

 

ーえ、どうしてですか!?

 

花のことにさえ目を向けることができない人が、人に目を向けれるわけがない、店をやっていけるはずがない、って。それをきっかけに、毎日のように叱られ、でもだからこそ、自分の甘さに気づけたんだ。お店の環境、原価率、スタッフに何円払うか、些細なことに自分の意識を向けれるようになった。

 

 

 

『人生は仮面ライダー』

 

ーひととの出会いが、川田さんを成長させたんですね。
よく、学生時代の出会いで人生が変わった、なんて番組によく出てくるけど、川田さんにとってはそれが33歳の時だった。年齢を重ねても、新しい考えを吸収して、どんどん変わっていくってとても強みですね。

 

そうそう。人生は仮面ライダー!ってこと。

 

 

ー仮面ライダー!? 変身するってことですか?

 

正解!
今日より、明日、明日より明後日。ちょっとずつ、かっこよく変わっていくことで自分がより良く、ハッピーになっていく。なんのために働くか、僕は、その答えの一番は自分が幸せになるためだと思ってるんですよ。平凡でもいいじゃん、幸せなら。社会に出たら大変よ、競争競争ばっかでしんどくなる。嫌になる。そんな時、僕の店においで。おいしいもので幸せにしてあげる。

 

ビストロパパでいただいたランチ。とってもおいしくて幸せでした!

 

ー社会人になってしんどいことあったらここに帰ってきますね!さっきおっしゃった、自分が幸せになるために働くって、案外盲点だったかもしれません。

 

店員にもそのことはきちんと伝えるようにしているんです。
僕はね、一流でもなく、二流でもなく、1.5流を目指したい。
一流ってどんなイメージ?

 

ーうーん…すごくキラキラしてて、格式張っていて、マナーがきちんとしてる、高価な料理を少しずつ出す所…だと思っています。

 

それもすごい魅力的だよね。でも、ちょっと気が引けちゃう。自分の理想は、1.5流。料理は一流。スタッフも一流に負けないぐらい輝いている。だけどもアットホーム。ちょっとしたお祝い事に来たくなるようなお店。
そうそう、これ見てほしいんだけど…

 

実際に写真で見せていただいたものの一つ。これだけではなく、沢山のケーキを作られていました。

 

ーすごい!これは全部川田さんが一人で作っているものなんですか?

 

僕の担当なんだよ。毎日のようにハッピーバースデーやおめでとうを書いてる。ケーキ作りに力を入れててね。朝早く来て、スポンジから作って、一つ一つ文字を書いていく。僕が八時間働くところを、一時間早く来て九時間にしたらこういうものが作れる。お客さんがすごく喜んでくれるんです。バレーをしている子には、丸い、バレーボールのケーキを作ったりね。

 

普通のホテルだったら、こんなことできないし、しないでしょう?
こういうあたたかさ。これが1.5流につながるんだよ。ビストロパパが目指しているものです。
僕はね、今は面接にくる子ほとんどを採用している。前までは元気、明るい、仕事が出来そう!って子ばかり集めていた。でも、そうじゃない子、野球だったら二軍三軍とか、そんな子も採用するようになった。今は石ころかもしれない。それでも、磨けばきっとみんな輝ける。そんな子を育てたい。

 

挨拶もそんなに出来なかった子が卒業した時に、「店長!雇ってもらって人生変わりました、就職できましたありがとうございました!」って来てくれた時が、もうとても嬉しいんです。

 

ー何のために働くかが、少し分かった気がします。自分が幸せになるため、っていう言葉だけ聞くと、なんだか独りよがりで、優先順位は低いのだと思っていました。でも自分が変わっていって幸せになるからこそ、相手も幸せにできる、目からうろこです。

 

カウンターにはスタッフから川田シェフへのお祝いの色紙が。さすがみんなの「パパ」です。

 

ーとりあえず、今は気を張らずに将来のことをなんとなく考える程度でいいのかなと思いました。でも未来のために、ひととの縁を大切に、出会いや新しい考えを吸収できるよう容量の大きい人間になっていこうと思います。新しい自分に変わることができる勇気って大切ですね!

 

そう、自分たちが偶然パパ吉であって、インタビューすることになったのも縁だしね!
出会いに感謝です。

 

ー川田さんのお話から学んだ多くの事を吸収して、より素敵な自分になっていこうと思います。人生は仮面ライダーですしね!

 

カワタ語録。店長直筆です!

 

 

ライターだより

不思議なご縁から数か月、もう一度縁をつなげることができたことがとてもうれしいです。
大学も折り返しの学年で、ずっと心の中にもやもや張り付いてた将来のことが、少し前向きに考えることができました。今度ビストロパパで友達の誕生日を祝ってもらおうと計画中。

 

カメラマンだより

川田さんは人情の厚い、お店に入った瞬間からあたたかく迎え入れてくれる、本当にみんなの「パパ」のような方でした。インタビュー中にはカメラマンの僕にも話しかけて会話の輪の中に入れて下さって、あたたかい、楽しい時間を過ごすことができました。
僕もこんな気遣いのできるあたたかいひとになりたいと思います。

 

【かいたひと】まお/ライター&カメラマン

広島生まれ広島育ち、英才教育によってカープをこよなく愛す生粋の広島人。旅行と温泉が好きで暇を見つけてはカメラを持って外に出る。気づいたら歌をうたっている。

 

 

【とったひと】ゆーた(Yut@)/カメラマン

知らないところを探検するのが好き。もちろんカメラをつれて。
家ではクラシックギターを弾いたり、本を読んだり、寝たり。
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