「変わる町の変わらない洋食屋さん」 繰り広げられるみんなのものがたり/restaurant Ragoût 光野良基・和江

    

聞き手:ひなぴよ 写真:まさた 編集:みやさこ

 

下見からバスに15分ほど揺られて、「石ケ瀬橋」で下車し、少し歩くとオレンジの屋根と緑色のドアが可愛らしいレストランにたどり着きました。「restaurant Ragoût」は、少し贅沢をしたい日にぴったりな知る人ぞ知る洋食屋さん。

 

 

ラグーは光野良基さんと和江さんのご夫婦でされているレストランです。私は小さい頃から家族で通っています。お店に入ると和江さんが出迎えてくださり、キッチンの奥から良基さんがにっこりと微笑んでくださいました。お腹を空かせた私たちは、お二人にお話を伺う前にランチをいただくことに。

 

キッチンを覗かせてもらうのははじめて!背中がかっこいいです。

 

カジキマグロのステーキ。見たことがない野菜がちらほら。

 

「Ragoût」とはフランス語で「煮込み」

 

—— スープもメインディッシュもデザートもとっても美味しいです。メニューはどのように考えているんですか?

 

半分は自分が食べたいって思うもの、もう半分は仕入れた材料と相談する感じで作ってるかなあ。あとは、基本になるソースがあります。トマト系やクリーム系、デミグラス系、だしを使ったもの、ビネグレット系だったり。そしていろんなものを入れて一週間以上かけて煮込むんですよ。

 

—— 1週間も!(驚)

 

だって普通の洋食は家庭で作れるでしょ。ずっと食べてくれている人に満足してもらえるようじゃなきゃ、もうお店でだしたくないと思うんです。ちなみに、お店の名前の「Ragoût」とはフランス語で「煮込み」という意味なんですよ。

 

—— たしかに、ラグーの煮込み料理は家で真似できない・・・!

   料理をする上で大事にされていることはありますか?

 

そうだなあ・・・、丁寧に仕事をすることかな。やっぱり、時間がたつと雑になってきてしまいがちだけど、そうならないようにね。基本を大切にして、周りを綺麗にすることからはじまるかな。そこに応用だね。あとは、絵が好きなのもあって、料理をひとつの絵のように思ってるかなあ。

 

ーたしかに、盛り付けがいつも素敵です。絵がお好きなんですね。

 

絵は好きね。ここに飾ってある絵はお客さんが持ってきてくれたのよ。

 

ーいいですね!お店が愛されているのがわかります。

 

 壁に飾られたひまわりの絵はお客さんから。黒いエプロンの女性が和江さん。

 

変わっていくものと変わらないもの

 

ーお店をはじめて何年になりますか。

 

もう25年になるんよ。

 

ー25年!!(驚)

 

そう。お店をはじめたばかりの頃は、すっごい忙しかったんだから。お客さんは今の2倍くらいいたんよ。当時は、東広島に飲食店なんてほとんどなかったし。昔は、大学生もよく来ていて、「ラグる?」なんて言葉もあったのよ(笑)

 

ーいい言葉ですね!使っていきたいです(笑)

 今ではお客さんは減ってしまったんですか?

 

そうね、前よりは少ないね。でもこれは悪いことではないと思うんよ。売り上げのためってことなら、もっと宣伝したり、沢山、席の数を増やしたりってやり方もあるとは思うけど。今の私たちにとっては、ちょうどいい忙しさなんよ。

 

ーそうですよね。忙しければいいってものでもないですよね。お客さんはどんな方がいらっしゃいますか?

 

うちは、お店をはじめた頃から通ってくれてるお客さんが多いわね。だから、お店と一緒にお客さんも私たちも年を重ねていくかんじかしら。

 

ー(そうかあ、お店が始まった頃、大学生だったらその方は今は50歳ぐらいってことになるもんなあ。)

 

 

まぁこれだけ時間が経つと、亡くなられた方もいらっしゃるわ。例えば、夫婦でよく来てくれていた方が、旦那さん一人で来られたのよ。それで「女房はいつも何を食べていましたっけ?」って聞くわけ。そして料理もグラスも2人分注文するのよ。

 

ーこのお店が2人の思い出の場所だったからですね。

 

そうなんだろうね。私だったら、一緒に行っていたそういう場所は行きたくないと思うけど、それを克服してきてくれたのかなあ・・・。料理を運ぶときも涙が止まらなかったわ。旦那さんは、淡々とされていたけどね。

 

ー旦那さんはどんなことを考えていたんだろう・・・。

 

うーん、そうはいっても増えることも多いのよ!(笑)お店を始めた頃の話なんだけど、お客さんが食事する間、私がお客さんの赤ちゃんを代わりに抱っこしてたの。それから月日は経って、その赤ちゃんが成長して、この間ついに、その方が子どもを産んだもんね。前まで赤ちゃんだったのに。赤ちゃんが生まれたり、おばあちゃんが亡くなったり、こう考えると長い時間が経ったって感じるね。

 

ーこのお店がいろんな家族にとって大事な場所だということですね。

 私もこの先ずっと通いたいです。

 

あなただっていつか赤ちゃん連れてくるかもよ?なんてね(笑)

でも、私たちはもう若くないし、これからは、無理せずに続けていけたらいいかなって思ってる。最近はワゴンを導入したりしてるの。腕ももうしんどいし。他にも、どうすれば楽になるかなって思って、バイキング形式にしたり、一度に料理を出す御膳にしたりっていうのも考えたの。でも、それはうちは違うかなって思ったり。昔から通ってくださってる方をがっかりさせたくないのもあって変えたくないのよね。

 

ー今後、このお店はどうなっていくんですか?

 

うちは、子どもが店を継ぐわけではないから、一代で終わりかな。だから、ちょっとでも長く、無理はせずにやっていきたい。もう先は細くなっていってるかな。

お店を閉めるときは、皆さんに「ありがとうございました」と書いた看板をだして、感謝をしながら閉めようと思うよ。

 

 

 

こぼればなし

 

ーお店が25年ってことは、お二人は出会ってそれ以上ってことですよね。

 

実は小学校の同級生なの。だから、何年だろう、55年くらいかな(笑)

 

ー55年!すごい!お店でも家でも一緒なんですね。仲良しですね〜!

 

そんなことないわよ〜(笑)

 

ー休みの日は何されるんですか?

 

2人で遊びに出るのよ。尾道とか道の駅に行って、食材探しも兼ねてね。お皿に少し変わった面白い食材を並べたいからハシゴしたりするの。ついでに、温泉とかね。あとは運動不足だから歩くためにも・・・

 

ーやっぱり仲良しです!!!!

 

ラグーの美味しさの秘密はお二人の仲の良さかもしれません。

 

ライターだより

このお店はいろんな物語の詰まった空間なんだなあと感じました。また、もともと大好きなお店だったので、じっくりお話ができて嬉しかったです。そして、少しでも長くお二人には元気でいて欲しいと思いました。今日、あなたもラグる?

 

カメラマンだより

インタビューをさせていただいている間も、お二人は何度も顔を見合わせていらっしゃいました。とても仲が良いお二人だからこそ、みんなから愛され続けるラグーになったのかな?ぜひまた足を運びたいなと思います。

 

 

restaurant Ragoût
住所:〒739-0014 
広島県東広島市西条昭和町7-15
TEL:082-423-6222
営業時間 11:30~14:30/17:30~21:00 (定休日 月曜・第3火曜)

 

【かいたひと】ひなぴよ

ライター。西条生まれ西条育ち。インスタグラムのストーリーでは愛猫「クリムトくん」の率がかなり高い。

 

【とったひと】まさた

カメラマン。暇なときはコーヒーを飲みながら映画鑑賞。