「好きだから、猟師になった」まっすぐな生き方に大切なこと / 東広島ジビエセンター 和泉川健太郎

    

聞き手:かおりん 写真:しゅるしゅる 編集:あゆ

 

 

インタビューを終え、「竹を割ったよう」ということわざが浮かんだ。

 

[竹を割ったような性格] :さっぱりとした、素直でまっすぐな性格のこと。

 

多くの人が竹のようにまっすぐさっぱり生きたいと願うだろうが、悩むなと言われたところで、悩まなくなることはあまりない。
「悩む人」と「悩まない人」の違いはなんだろう。

 

 

東広島の最北端に位置する豊栄町。
近年鳥害獣被害が全国的に増加し、豊栄町でも特に鹿による農業被害が深刻な問題になっている。
ここで東広島市唯一の、捕獲から加工までを行うジビエセンターを開いた和泉川さん。
1つひとつの素材の個性を見極め、高品質の食用ジビエに加工する技術を持つ猟師だ。

 

ジビエセンターのジビエを使った「ジビエ・地ビールの会」を企画する、ふーみんさん、日野さんと一緒にお話を伺った。

 

猟師として生きること

 

猟師の仕事は一年中休みなし。
罠にかかったと連絡があれば、正月だろうと駆けつける。

 

「猟師の仕事は、本能的に好き。猟師で生きてみたいと思った。
サラリーマンだったら忙しすぎて続けられない。」

 

 

祖父が猟師だったこと、同級生が狩猟をしていたことがきっかけだった。
これだ!と思ったその年のうちには猟師の免許を取得。

いずれは猟師として生きていきたいという思いから、狩猟において地形的に面白さを感じ、人との繋がりもあった豊栄に移住した。

 

野生の肉、ジビエ

 

ジビエは簡単にいうと天然の食肉を指す。
野生肉に対する負のイメージ(臭い、硬さ、味…)は多いが、和泉川さんたちの処理したジビエはふーみんさん曰く、
「お母さんに食べさせてあげたい。」というほどの味だそう。

 

 

野生の肉は均質化された肉とは異なり、個体ごとに特徴がある。
自然の肉のうまさを引き出すためには、素材にあった処理が必要だ。
鹿に関しては全て手づかみのナイフ一本で、まさに野生動物と体ひとつで向かいあう。

 

 

イノシシで大きいものは、軽トラの荷台くらいあるという。

 

 

「世の中が自然の物を求めるようになっていくんかなとは考えることもあるけど、今の時代天然だけを食べていくのは無理。」

 

 

 

 

「ちゃんと育てた肉って高いんだよね。
野生のイノシシでも大きくなるのに5年から6年はかかる。
僕が子供の頃はすき焼きなんて年に数回食べられるかどうかやったのに、今は数千円出せば食べ放題があるよね。」

 

市場も供給も増え、スーパーには安い肉が並ぶ。
安くても利益が出る仕組み。
その背景には何があるのだろう。

 

私たちが当たり前だと思っていることって実は不自然なのかも?

 

筋を通す人づきあい

 

若くて60代の猟友会の中で、40代の和泉川さん。
猟師の仕事はそれぞれテリトリーがあるらしく、年上の方と関わることも多いが、人間関係で悩むことはほぼないという。

 

「もちろん、それは怒られた経験むちゃくちゃあるから。
学生のころ、自分にとっての先生は、恐ろしかったけど優しかった人。
生き方を教えてくれた。筋の通らないことはダメよって教えてくれた。」

 

 

食べ物の好き嫌いもない。

 

 

特別世渡り上手なテクニックを持っているというより、和泉川さんの人づきあいにおいてぶれないことはいたってシンプルで、
「筋を通す、裏切らない、嘘をつかない、裏表作らない」

 

筋は通っていても、ケンカしている2人、両方の人と付き合えるの?という質問に対して、

 

 

 

 

「ケンカしとる2人がいても、自分はどちらも嫌いじゃないからどちらとも付き合うってはなからいう。
どっちつかずっていうことはしない。
離れていく人は離れていくし、あんまり気にしない。」

 

 

 

「自分の言ったことで、もしかして相手を傷つけてしまったかもって思ったり..」という悩みに対して、

 

ごめんね。っていえばいい。
一瞬気になったら、あっと思ったら、すぐごめんって」

 

 

 

和泉川さんの話を聞いていると、あれ、なんで悩んでいたんだっけと、自分の「悩み」を見失う。
「人間関係って難しい」と思い込んで、自ら悩んでいたような気がしてくる。

 

どうしたら竹のようになれるのか。とまた悩みだす。
「だから何。それがどしたん。」
と和泉川さんはいうけれど、なぜか突き放された感じがしない。
それから、「まあ飲もうよ。」と言うだろう。

 

「友達とどうせ遊ぶなら楽しくしたほうがいいよね。人の悪口言うんじゃなくて、まあ飲もうよ。楽しい話しようよって。」

 

「何かあったらすぐ駆けつけてくれる仲間がたくさんいる」と語る和泉川さん。
なんだか自然と自分まで、まっすぐ素直に話していた。

 

 

ライターだより

約60個ある竹の節は、成長しても増えることはなく、節と節の間が広がっていくらしい。経験や出会いをかさね、にょきにょきと伸びていく、まっすぐな竹のようにありたいと思いました。

 

カメラマンだより

インタビューの中で、ジビエになる動物たちの血抜きの様子を動画で見たり、
実際にぶら下げてある私の身長以上もあるイノシシを撮影して、
生かされている ということを実感しました。
想像力をはたらかせて謙虚に生きたいと思います。
貴重な体験をありがとうございました。

 

 

東広島ジビエセンター株式会社

住所:〒739-2311 広島県 東広島市豊栄町 乃美3262-2
電話番号: 090-3740-9404 
Facebook : https://www.facebook.com/pages/東広島ジビエセンター株式会社/1759969920892149

 

 

【かいたひと】かおりん
ライター
三度の飯より米が好き。

 

【とったひと】 しゅるしゅる
カメラマンたまにライター
カメラと写真が大好きで、最近はポートレートを撮りたくてうずうずしている。
好きな食べ物は嚙みごたえのあるもの。特にイカが良い。