田舎はなんとなくじゃ生きられない 福富在住のプロカメラマン/iDS Studio山口聖巴さん

 

聞き手:りょーま 写真:かんちゃん 編集:みやさこ

まちがある。人が住む。

刺激的な都会に憧れてやまないひと、ゆったり田舎で過ごしたいひと、地元が好きで残るひと、知らない場所が好きで飛びまわるひと。

さまざまな思いを持ったひとで町は作られている。

 

そこに住む理由を自分で考えたことがあるだろうか。

 

仕事場に近いから、なにかと便利だからという理由で選んでいるひともいる。

しかし、「何もない田舎だからこそ何かを作ろうと頑張れる」と語るのが、これからご紹介するプロカメラマンの山口聖巴さんである。

 

福富の撮影のときの写真。

 

広島県広島市出身 福富町在住の山口さんはカメラマンを目指す道を高校卒業後一度は親に反対され諦めアパレル関連の仕事に就くが、その想いを捨てられず父親の知り合いのフリーランスカメラマンを紹介してもらい弟子入り、5年修行した後、独立した。

28歳で結婚後、奥さんのお父様が亡くなったことをきっかけに奥さんのご実家である福富町への引っ越しの話が浮上する。

 

奥さんのご実家が小さな農家だったこともあり、半農家、半カメラマンとして生きていくのも面白いと思い、福富への移住を決断する。その後、世羅町や福富町など里山地域の地域活性PR、The Earthなど店舗PR、音楽関係など、多様なジャンルのプロモーションで活躍中。現在はまちおこしにも積極的で、福富で暮らすひとの写真冊子”ふくらし”にも携わっている。

 

県外に撮影にいくことも。長野県にて富士山を撮った際の様子だそう。

 

山口さんはなぜ、一見クリエイターにとって不利に見える田舎で暮らすのか。地方やそこに住むひとのたくさんの魅力を知るプロカメラマンに、この町を選ぶ理由を聞いた。

 

自分で考えて住んでみること

 

ー田舎に住むのは大変じゃないですか?

 

よくそれは言われるんですけど、逆に僕はそこまで都会に住む理由があるのか聞きたいです。会社への通勤距離が近い、買い物に行きやすい、食事やお酒を飲む店が近くにあるみたいな、便利だからという理由でなんとなく都会に住んでる人が多いように思えるんです。

 

僕の場合、いま35歳で家族をもって子供は3人います。そうなってみて月に何回飲みに出れるかって考えたらほとんど出られてないんですよね。

 

仕事関係のお付き合いはあったりするんですけど、プライベートは昔ほど出れてなくて。そう考えると僕はフリーランスで活動しているので勤めに出ることもないし街でも田舎でもどこに住んでも一緒です。

 

なら自分にとって好きな場所に住むべきだなって思ったんですよ。

 

ーでもやっぱり物足りないと思うことありませんか?笑

 

たしかになんもないなとか刺激がないなとも感じますけど、発想を変えると何もないから何でもできるとも考えられると思います。

 

例えば福富町は公共交通機関がないので、夫婦でお酒を飲みにいくことが難しい。それなら田舎は土地は広いのでワインセラーを買って自分の家で保管できたら家で飲めるじゃんとか。

ジムは遠いけど、スペースが余ってるからランニングマシンを買ってジム作っちゃえばいいじゃんみたいな笑

そういった発想を持てるようになるんです。

 

いつでも鍛えられますね

 

ー自分で考えるようになるんですね。たしかに満たされてたら考えることは減っていきますね。

 

そう。

誰かがやってくれるというのは、街のいいところなんですけど、それが当たり前になってしまうと、それは豊かじゃないなと思います。

 

田舎では、基本的にないもののほうが多いから、どんなサービスも誰かのおかげで受けられているという感覚を持つことができるんです。

 

誰かがやってくれてる、それが街のいいところなんですけどね。

 

それをあたりまえではなくて誰かがやってくれているっていう感謝の気持ちを持つのか持たないのかでは、意識が違ってきて。

 

そういったことに気づくきっかけがもちやすいんですよね田舎は。

 

葉に熱が入る山口さん

 

ー実際に山口さん自身は福富に移住されてどう変わっていきましたか。

 

移住して最初の5年は仕事で町を出たり入ったりばかりしてたんで、町の人たちとあまり交流はなかったんですけど、去年くらいから移住者同士で集まって飲むようになって町内に知り合いや友達が増えて福富が好きになってきて。

 

あと今は気持ちにゆとりができました。

僕が一番好きなのが晴れた日の朝なんです。鳥のさえずりとか、農作業してる人の草刈機の音とか、あんな音しかなくて。それが暮らしてくると音ではなくなっていって、気持ちがやすらいで、おだやかな気持ちで朝を迎えられるんです。

 

ーすてきです。

 

そうやって暮らしていくと次第に、自分の事業でも福富町になにかしたいと思うようになっていきました。

そしたら、ふくらしを作りませんかっていう話も来たりして。今では年々町に携わる機会も増えていっています。

福富町で暮らすひとの”生き様”をテーマにした冊子「ふくらし」

 

ー自分から関わることで町が好きになったんですね。

 

田舎×クリエイターの可能性

 

ーでは反対に、働くメリットはありましたか。

 

僕の場合、農業を始めたり実際に住んだりすることによって、仕事の中で田舎の人たちと感覚が共鳴できるようになったことが大きいですね。気持ちが分かるんですよ。

 

寒いですよね~って時に、うちの福富も寒いですよ~とか言えるんです。

 

これって大切なことで、町からいってたときはどうしても意思疎通が難しい部分があったんですけど、今は当事者として話をすることができるようになりました。

 

ー仕事を依頼してくれた人と同じ目線で仕事ができるようになったんですね。

 

そうですね。

もう一つよかったのは競合が少ないことです。

 

田舎クリエイターはかなりチャンスがあると思います。

 

地方で目立つという道も、あることを教えていただきました。

 

さきほど言ったふくらしという冊子を作るってなった時に、たしかカメラマンがいるよね?って話をしてくださったみたいで。

冊子は作ったことがなく不安でしたが、あの人の協力があればできそうだなって思えるように、日ごろから頼れるつながりを作っておくことが大切だなと感じました。

 

ー最後に日ごろから大切にしているポリシーなどありますか。

 

天井が見えない人と付き合っていくことです

そういう人とは最初は話している内容もわからなくて居心地が悪いんですけど、食らいついていくと、一緒に仕事ができるようにもなっていきます。

 

好きな場所に住むという話に矛盾するようですが、環境と人間関係は違います。

 

居心地が悪いからこそ自分自身をもっと変えていきたいなって思えるんです。

これからもその気持ちは忘れずにいこうと思っています。

 

壁には山口さんが撮った迫力のある写真

 

ライターだより

なぜ今ここに住んでいるのかと言われて、僕もハッとしました。
住むと決めた時に意味を見つけるのはきっと難しいけど、生きていくうちに少しずつこの場所に愛着もわいているし、やりたいことも出てきている。
大学に通っているから、という理由だけで住みつづけるにはあまりにももったいないのではないか。
一緒の趣味ではなせる仲間がいるから、お気に入りのお店があるから、景色がきれいだから。
自分なりの住む理由をふやそう。そして卒業してからも、自分の意思で住む場所を選べるひとでいよう、と決意しました。

ありがとうございました。

 

カメラマンだより

今回のインタビューはカメラマンとして生きていきたい僕にとって、グサグサ刺さる言葉ばかりでもっと聞きたいという気持ち、上手く撮らないとという気持ちと、プロのカメラマンを撮るという変な緊張感で少しそわそわしていたことを覚えています。(笑)
僕もインタビューに行くまで、田舎クリエイターは不利なのではないか?と思っていました。しかし、ものの見方次第では、田舎は都会に比べて、カメラマンの数も少ない上に、人と人との距離が近く、意外と都会より本当に撮りたいもの、ひと、目標にアクセスしやすいのかなと思いました。田舎の可能性、捨てたもんじゃないな~~

 

最後に、山口さんが無水鍋を使った田舎の暮らしを綴っているコラムを掲載しています。
カメラマンの傍らで農家としても活動されている様子が見ることができます。
ぜひご覧ください。

https://musui.co.jp/column/

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iDS Studio / 写真撮影・映像制作
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【かいたひと】りょーま/ライター&カメラマン

大分出身。主に人と話すか家でAmazonプライムビデオ、YouTube、TVerを見ている。暇さえあればプライム会員に加入させられるため注意。

 

【とったひと】かんちゃん
カメラマン兼WEBデザイナー。大阪出身。
写真を撮ること、人と話すことがとにかく好き。
人が気が付かない魅力や楽しさを探すことが得意。