モノではなくココロを買うということ ここから始まるやさしい生活/ 暮らしの店en 小見映子・実可子

      

聞き手:りょーま・みゆ 写真:ゆーた 編集:みやさこ

 

 

西条駅から10分ほど歩いて路地に入ると見えてくる「暮らしの店en」
見た目は古民家で、凛とした佇まい。軒先にはすだれや鉢に植えられた植物で目が涼しい。

 

店内には1つひとつの商品が大切にされていると感じるディスプレイがされています。

普段使いできる器やキッチングッズ、主に職人さんの手仕事による品々、自然素材のものがセレクトされており、どれも思わず手にとりたくなるものばかり。

 

娘さんとお母さんの親子でされているお店です。インタビューは終始笑いの絶えない和やかなものでした。今回は主にお母さんにお話を伺いました。

 

なぜ今回、こちらのお店のインタビューしたのか。

 

以前、僕の友人がお気に入りのお店だと言っていて気になり実際に訪れました。初めての自分に丁寧に対応してくれて、蚊取線香が気になりますと言ったら実際に火をつけて匂いを確かめさせてくれたんです。

次々とお友達の家のような感覚でお客さんが訪れては、会話に花が咲きます。西条にこんなにも心があたたまる雑貨屋さんがあるなんてと感じたため、インタビューさせて頂きました。

 

職人さんの手仕事や自然素材のものに興味をもったきっかけ

 

ー職人さんの手仕事や自然素材のものに興味をもったのはいつ頃からなんですか。

 

実際に使い始めたのは専業主婦になってからかしら。ただ子供のころからそういうものへの憧れはあって。

 

ー子供の頃からというと。

 

私の両親が料理屋を営んでいてね、いつも食事はお店の片隅で食べるのが普通だったの。だけど忙しい状況でも自然の素材でつくられたほうきを使っていたり、竹のざるで梅干を干していたりして、丁寧な暮らしが垣間見えていたんです。そんな両親のすがたを見て育って興味をもったし、私はしっかり生活の中で使いたいと思ったのかも。

 

ハキハキと話される姿が印象的な小見さん。

 

ー小見さんが生活の中で使い始めたのはいつ頃ですか

 

結婚して、昔から憧れのあった専業主婦になってからです。使っていくうちに、職人さんの素敵なものや使いやすい道具を周りに紹介できたらなと思ったんです。それからこの暮らしの店をやろうと思ったの。

 

 

先生の人柄に惹かれたんです

 

ー小見さんにとって特に身近な商品は何ですか。

 

お店を始めるきっかけにもなった志和地窯ですね。器自体も魅力的なんだけど、とくに先生の人柄に惹かれました。

 

17歳でふるさとの青森を離れて、18年間の修行を経て、広島県三次市に窯を開かれた方なんです。現在、77歳ですが地元の土を集めて粘土から作っているんですよ。ふつうは粘土になっているものを買って作るそうなんだけどね。それだけ手間をかけて作られています。

 

志和地窯の商品。先生のぬくもりが伝わります。

 

ーそれなのに意外と手に取りやすい価格ですね。

 

使ってもらわないと意味がないという考え方なんです。

たとえいいものでも、使われなかったらもったいないですからね。

先生は少しでも価格を上げるのに、頭痛がするくらい悩まれるんです。

 

ーせっかくなら沢山のひとに使ってもらいたいですよね。

 

ー先生の後継者はいらっしゃるんですか。

 

それがいないんですよ。

一代でやられてて、お弟子さんをとってないんです。

だからこそ早く紹介したいの。

 

 

先生、と呼ぶ志和地窯の職人さんの職人魂や、いくら時間をかけて作っても手に取ってもらいやすい価格で売る想いに共感された小見さん。

 

朝にはコーヒーをこの器で飲まれるそう。

この商品の、先生のファンだからこそ伝えたいものがあるんですね。

 

通販はやらないんです

 

ーお店ができて2年ですが、これからやっていきたいことはありますか。

 

この二年間を通して、日々の暮らしを豊かにする品を求めている方が意外と多いことに気づきました。

 

プラスチックのものは劣化するばっかりだけど、自然のものを使い続けると味がでてくるんです。

 

安いものをたくさんではなくて、本当に好きなものを一つ買って長く使う人が増えている気がします。

 

ー丁寧な暮らしに興味がある人が増えてきてるんですね。

 

そう思うわ。だから方向性はきっと間違っていないから、今後はもっとたくさんの人に知ってほしいですね。

 

このお店は「人と品を結ぶ」場でありたいんです

 

出会いのお手伝いができたらと思います。実際に来て、話して、触ることで品物の良さを感じてくれたら嬉しいですね。

 

接客というよりお話をする、がしっくりくる自然体さが素敵です。

 

そういう意味で、enでは通販をやってないんですよ。

 

ーいまどき珍しいですね。

 

通販では職人さんの想いや商品の良さが伝わらず売れてしまうかもしれないことが嫌なんです。

そうなると作り手の方、お客様のどちらにも申し訳ないので。

 

通販が主流となっていて、買おうと思えばなんでも手に入る時代に通販をおこなわない小見さん。

職人さんに直接会いに足をはこび、作品への想いをきいて、お客さんにしっかりと伝える。

並んでいる商品を買うだけでなく、自分の手元にとどくまでどれだけの人がかかわっているのかの物語が繊細に伝わります。

 

 

豊かな心で暮らす

 

ー最後に、若い方へなにかメッセージはありますか?

 

早いうちから本物を見ておけば年を重ねた時にわかるんです。

 

今はお金に余裕がなくて買えないかもしれないけど、こんなすてきなものがあるっていうことは知っておいてほしいの。知っておいたら将来の選択肢のひとつになるから。

 

こころのこもった商品を通じて、豊かなこころで生きるという選択ができるお手伝いができたらいいなと思ってます。

 

竹かごを何年も大切に使っている話を聞いた時に、モノだけど育てることに似ていると感じました。

 

ライターだより

音楽を聴く、テレビを見る、お風呂に入る、気持ちよく寝る・・・。暮らしの中に楽しいと思える瞬間はいくつあるだろう。enさんには、何気ない瞬間も楽しくなってしまうものがあります。木のまな板は少し丁寧に野菜を切ったり、竹のかごに食器を並べたくて早めに洗ってしまったり、作ってくれた職人さんを思い浮かべながらマグカップでコーヒーを飲んでみたり。あたりまえの生活をすこし楽しく暮らしている小見さんの話を聞き、僕も働きだしたら心のこもった商品に囲まれて生活がしたいなと感じました。

 

最後に、長崎の五島列島で丁寧に手絞りでとられた椿油を購入。丁寧にとられて、心を込めて販売してくれて。このオイルだったら僕も髪の毛をいたわるだろうなと考えました。

ふだんの行動を変えてくれる心を買うことができたような気がして満足です。

 

カメラマンだより

今回この暮らしの店enの様子を撮影させて頂くにあたって、初の取材ということもあり最初は不安や緊張もありました。しかし、一歩お店に足を踏み入れた瞬間、そんな気持ちはいつの間にかなくなっていました。お店に入って最初に迎えてくれた小見映子さんはパワフルで周りの人にも元気を与えるような雰囲気の方。娘の実可子さんは笑顔が素敵で優しい雰囲気。このお二方の雰囲気を写真でお伝えできていたら幸いです。

 

ありがとうございました。

 

暮らしの店en
739-0012 広島県東広島市西条朝日町1-14
Tel:090-7997-9353
営業時間:10:30~18:00(定休日 月・火曜)
HP http://good-en.com/

 

【かいたひと】りょーま/ライター&カメラマン

大分出身。主に人と話すか家でAmazonプライムビデオ、YouTube、TVerを見ている。暇さえあればプライム会員に加入させられるため注意。

 

【とったひと】ゆーた(Yut@)/カメラマン

知らないところを探検するのが好き。もちろんカメラをつれて。
家ではクラシックギターを弾いたり、本を読んだり、寝たり。
Twitter → @Yh_photo