「いい父親から笑ってる父親へ」家族とともに歩んできた7年間とこれから EARTH BERRY COFFEE/片岡 晃

  

聞き手:あゆ 写真:かんちゃん 編集:みやさこ

下見から自転車で10分ほどの、西条昭和町にあるEARTH BERRY COFFEEというコーヒー屋さん。店内では、販売されているコーヒーがすべて試飲でき、ドイツ製の大きな焙煎機、壁に描かれた世界地図が印象的。

こちらが店主の片岡晃(かたおかひかる)さん。
自ら海外に足をはこび、世界一のコーヒー豆を集め、「うちでしか飲めないコーヒー」を東広島の人々に届けています。
豆の質にこだわりぬいて、地元の人に愛されるコーヒー屋さんを経営する片岡さんに話を伺って来ました。

 

—— 今日はよろしくおねがいします。

こちらこそよろしくお願いします。
とりあえず何か飲みますか。コーヒー、アイスラテ、オレンジジュースがありますよ。

—— アイスラテをおねがいします。それにしても焙煎機が大きいですね。機関車みたい!

お店の中方も入れるので、どうぞ見ていってください。

焙煎機は世界でも有名なドイツ製のもの。飛行機でやってきました。

 

EARTH BERRY COFFEEのはじまり

——  コーヒー屋さんを作ったきっかけは何ですか。

きっかけとしてはもともとおじいちゃんが喫茶店をやっていて、それをお手伝いしてたんですね。それが年中無休で、とにかく忙しくて。あと10年もやっていけないなと思ったんです。

——    10年もやっていけないというのは??

僕、子どもが2人いるんですよ。やっぱり父親として、「家族のために仕事を頑張らなくちゃ」と思ってました。それで何か他の方法でやっていかなきゃ、って強く感じてました。

—— その他の方法が、EARTH BERRY COFFEEを開くことだったんですね。なんというかコーヒーの魅力、片岡さんの愛が詰まったお店ですよね。

そう思うでしょ(笑)
それがね、
僕、コーヒーそんな好きじゃなかったんですよ。多分、みなさんが思ってるより半分くらいしか好きじゃなかった(笑)

—— えぇ…!!(驚)すごく裏切られた感があります(笑)

何か新しい商売としてできないかなって考えた時に、当時東広島にコーヒー豆を専門に扱うお店がほとんどなかったということもあり、焙煎というジャンルが思い浮かびました。

そこで勉強のために日本中のコーヒー屋を巡った時に福岡で出会ったのが、スペシャリティコーヒーです。コーヒーなのにマスカットやリンゴのような味がするんです。ひっくりかえるほどびっくりして、そこで僕のコーヒー屋としての方向性が決まりました。

 

豆と人とのご縁、うちでしか飲めないコーヒーを

—— 7年前にお店をオープンされたんですよね。

そうですね。今でこそ、いいコーヒー豆をそろえることができるんですけど、最初はいい豆も買えなかったです。お客さんも少なかったですね。

—— いい豆ってどうやって出会うんですか?

オープンから2ヶ月後、コーヒー豆の買い付けツアーに欠員が出たのを知って、一生に一度だと思ってエントリーしたら、運よく参加できて。エチオピアに行きました。

そこでたまたま出会った買い付けグループのバイヤーさんに誘われて、数か月後に今度は中南米コスタリカの農場に一緒に行ったりしたんですよね。そのご縁がきっかけで交渉を進めていっていい豆を置けるようになったんです。

—— 見事チャンスを掴みとったわけですね。すごい。

だからオープン当初は、ふつうに商社を通して豆を仕入れてたんですけど、今では全てダイレクトトレードで仕入れています。実際に世界中の農園を見に行って、いい豆を集めるんです。うちでしか飲めないコーヒーを届けたい、って思ってます。

ダイレクトトレード
直接コーヒー農家からコーヒー豆の買い付けをすること。


お店の中は手作りのものだらけ。世界地図も片岡さんお手製。

—— 「うちでしか飲めない」コーヒー、いいですね。

ありがとうございます。まぁいい豆をいれたからと言って、お客さんはなかなかすぐには増えなかったですけどね。

—— じゃあ、お客さんをどうやって増やしていったんですか?

まず「コーヒースクール」を開きました。お客さんってね、豆の挽き方やコーヒーの淹れ方を知ると、豆を買ってくれるようになるんです。それが口コミで広がって、どんどん人が来てくれるようになりました。

最初はそこまで好きじゃなかったって言いましたけど、今では本当にコーヒーのことが大好きになっていますね。(笑)現地の農園のこと、カッピングのこと、流通の仕組み、実際の現場を見て、知れば知るほど奥深くて面白い。

—— ちゃんとコーヒーへの思いが聞けて安心しました。(笑)

 


店内にはたくさんの種類の豆が。全て試飲できます。楽しい。

いい父親から笑っている父親へ

—— お店を日曜、祝日はおやすみにしてる理由って、お子さんとの時間を作るためですか?

そうですね。なるべく子どもと一緒にいようと思って。

—— 自慢のパパですね。

いやー、昔は僕、子育てに関わってなかったんですよ、本当に全然。奥さんに任せっきりで。

—— それはお仕事が忙しかったからですか?

仕事が忙しいというより、父親として、仕事を頑張らないと、と思ってました。何が本当のいい父親なのかわからないまま、仕事を頑張ることがいい父親だと思ってたんですね、昔は。

—— 確かに、お父さんって一家の大黒柱的なイメージがありますね。

そう。家族のために父親は働くものだと言われて育ったし、「お父さん頑張らなきゃね」って言われるようになったし。

でも、うちの家族の場合、その「父親」じゃダメだったんですよ

うちの上の子は後天性の「自閉症スペクトラム」っていう発達障害があるんです。

——    初めて聞きました。

僕もはじめ聞いた時、なんじゃそりゃ?!って、何それ?!ってなりました、全然知らなくて。治療したら治るんですか?って感じ。

治ることは難しくて、他の子に比べてできないことが多いって聞いた時、すごく不安になったし、恐怖も感じたし、うちの子に限って何で、っていう怒りさえ感じましたね。

今だからいえますけど、やっぱり最初はかなりショックだったんです。でもずっとそうも言ってられないんで、少しずつ時間をつくって子どものことを知ろうとしていきました。

図書館で本を借りたり、当時少ないながらもネットで情報を調べたり。そうやって発達障害のことを調べていくと、同時に子育てのこともいっぱい知れて、女の人が普通に知っていることを自分はこんなにも知らなかったのかと、知れば知るほど興味がわいていきました。したらやっぱり子どもってかわいいんですよ。

 

それで、子育てをしながらお店をやっていく中で、お客さんからたまたま、子育ての講演会があるから、片岡さん行ってみたらって言われて行ったんですよね。

—— へぇ。

「日本最大級のパパ友グループ」って言われてるファザーリングジャパンの代表が話していて、そこで、

いい父親じゃなくてもいいんですよ。それより、ニコニコ笑って、穏やかなお父さんの方が、家族にとっても自分にとってもいいじゃないですか

って言ってて、確かに!!!!!と思ったんです。

そこで何かが自分の中で切り替わった気がして、俺単純なんで(笑)

いい父親像が、もともと「働く」ことで、子どもに出会って「子育てを頑張る」ことに変わって、頑張ってたんですけど、ああ、頑張らなくてもいいんだ、ちょっとしたことでも一緒に楽しくできればいいんだって思えるようになりました。

—— 子育ても仕事も頑張らないといけないって、悩んでるパパ多そうですよね。

 「休日は家族サービスしないと」って言ってる人、よく見かけますもん。

ちょっとした発想の転換とか、一つの言葉で変わることはできると思います。自分次第なんで、難しいことかもしれないんですけど。おかげさまで、「妻を手伝う」って感覚から一緒にやろうっていう感覚になれたことは良かったと思います。

—— 「いい父親より笑っている父親」って素敵な言葉ですね。何でも楽しんでできる人って、前向きなエネルギーを感じます。

そうなんですよ!この言葉って父親だけじゃなくて、いろいろなことに応用できて。何か頑張ろう頑張ろうって肩に力が入りすぎちゃうことってないですか?

—— 日々、頑張らないと、と思ってます(笑)

やっぱりね、真面目にやればやるほど、頑張ろうと思えば思うほど、疲れちゃう。自分で苦しめてしまうんですよ。僕は一つの言葉で変われて、子育てがすごく楽しくできて、よかったなって思います。


コーヒースクールはたったの540円。いつも予約で満席です。


店長として、パパとしてのこれから

—— 今年で7年目のEARTH BERRY COFFEEですが、今後はどういう風にと考えてますか。

今までやって来たことを続けて、何かやるべきことが出て来たらやる

それに尽きるかなと思ってます。縁ありきなところもあるから、わからないっていうのが正直なところですね。

開店当時からいろんなものが大きく変わってるんですけど。その変化を楽しめる柔軟さを大切にしたいです。

—— 変わっていくことに戸惑ったり、うまくいかないことってあると思うんですけど、それを楽しめるようになると、心が少し軽くなる気がしますね。ありがとうございます。

  

—— 最後にひとつだけいいですか。片岡さんのお父さんってどんな人なんですか….?

父親は自分を優先する人で、けっこう嫌でしたね。でも自分が父親になって、あの時の父の気持ちもだんだん理解できるようになって、そんな父を愛せるようになってきました。

自分もそうですけど、勝手に子どもって成長していくんだなって思います。親としては、自分のやりたいことを選んで笑っていけるように、サポートしていくだけです。

 

ライターだより

片岡さんに話を伺って、チャンスや縁を大切にすること、出会ったものひとつひとつを素直に自分の中に吸収していくことができる人間になりたいと思いました。私がこの記事を書くようになったのも、何かの縁。大切にしたいです。おわり。

 

カメラマンだより

コーヒーが大好きで、コーヒー屋を始めたわけではないという片岡さん。そのなかで、どうやって自分は仕事に価値をもたせるか、どうすれば仕事が楽しくなるかを考えるプロセスはすごく勉強になった。自分もいつかはカメラで生きていきたいが、今はほかの選択肢も検討中……

 

EARTH BERRY COFFEE
住所:〒739-0014
広島県東広島市西条昭和町6-2 ラフィーネ昭和町1F
TEL:082-421-6155
営業時間: 10時~19時まで ( 定休日 日曜・祝日 )

ホームページ:http://earthberrycoffee.com/index.php

 

【かいたひと】あゆ
ライター兼広報担当
広島大学総合科学部所属。出身は宮崎県。すきな食べ物は真鯛のおすしです。

 

【とったひと】かんちゃん
カメラマン兼WEBデザイナー。大阪出身。
写真を撮ること、人と話すことがとにかく好き。
人が気が付かない魅力や楽しさを探すことが得意。